「下を向くと頭が痛い」
「頭を下げたときにズキズキする」
頭痛は多くの方が経験する症状ですが、現れ方や原因はさまざまです。
下を向いたときに頭が痛む場合、片頭痛や緊張型頭痛のような頭痛のほか、副鼻腔炎(蓄のう症)が原因の可能性も考えられます。
また、脳動脈解離や脳疾患など命にかかわる疾患が隠れているケースもあり、早めに脳神経外科など専門の病院を受診することが大切です。
この記事では、下を向くと頭が痛いときに考えられる病気や、頭痛以外の注意が必要な症状、痛みがつらいときに自分でできる対処法などについて詳しく解説します。
下を向く・頭を下げると頭が痛いときに考えられる病気
下を向いたり、頭を下げたりしたときに頭痛が生じる原因は、以下のようにいくつか考えられます。
- 片頭痛
- 副鼻腔炎(蓄のう症)
- 緊張型頭痛
- 脳動脈解離(椎骨動脈)
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
片頭痛
下を向くと頭が痛くなる場合、まず考えられるのが片頭痛です。
片頭痛で痛みが起こるのには脳血管の拡張が関係していると考えられており、頭を下げると脳の血流が増え、血管が拡張することから痛みが強くなります。
頭の片側(右側もしくは左側)のみが痛むことが多いですが、両側に症状が起こるケースもあります。
一般社団法人 日本頭痛学会の調査(※)によれば日本人の8.4%が片頭痛を抱えているとされ、悩んでいる人の多い頭痛です。
(※Sakai F, Igarashi H. Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997; 17(1):15-22.)
症状や原因
片頭痛は、ズキンズキン、ズキズキと脈打つような拍動性の痛みが特徴です。
痛みの発作は4〜72時間ほど続き、日常生活に支障をきたすほど強く痛むことも少なくありません。
また、下を向いたり、階段を昇り降りしたりなどの日常的な動作で痛みが悪化することもあります。片頭痛の主な症状は以下の通りです。
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 下痢
- 光や音、においに敏感になる
- 目がチカチカする、ギザギザした光が見える(閃輝暗点) など
片頭痛が起こるメカニズムについては諸説ありますが、脳血管の拡張や三叉神経への刺激などが関係しているとされています。
また、片頭痛の多くには、頭痛が起こるきっかけがあることも特徴です。
代表的なものがストレスで、片頭痛の場合、ストレスから解放されてほっと一息ついたときに痛みが起こることが多いです。女性の場合、月経前後や排卵日前後に片頭痛が起こることもあります。
治療法
片頭痛の痛みが起こる仕組みや原因物質は現在ではほぼ特定されており、飲み薬や注射薬での治療や予防が可能です。
片頭痛自体は命にかかわる病気ではありませんが、痛みが強く、仕事や家事に支障が出たり、痛みがストレスとなってしまっているケースも少なくありません。我慢せず病院で適切な治療を受けましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでも、片頭痛の予防薬「CGRP受容体拮抗薬」や高血圧・心血管系疾患の方も服用可能な「選択的5-HT1F受容体作動薬(レイボー®︎)」など、症状に合わせた治療が可能です。
副鼻腔炎(蓄膿症)
下を向くと頭が痛い場合、副鼻腔炎(蓄のう症)が原因となって頭痛が起きている可能性も考えられます。
副鼻腔炎とはその名の通り、副鼻腔(鼻の奥にある空洞)が炎症を起こし、膿が溜まる病気です。
症状や原因
副鼻腔炎では、以下のようにさまざまな症状が起こります。
- 頭痛
- 頭重感
- 頬・鼻・こめかみ周囲の痛み
- 鼻水、鼻詰まり
- 後鼻漏
- 嗅覚障害
- 発熱 など
副鼻腔に溜まった膿によって鼻の空気の流れ(換気)が悪くなり、副鼻腔内の圧力が高まるため、頭や顔面の圧痛や鈍痛につながるという仕組みです。
ひどい副鼻腔炎の場合、炎症が周囲の神経に広がることで痛みが起こっている可能性も考えられます。
頭を下にすると副鼻腔内に溜まった膿の圧力のかかり方が変わり、周囲の神経を強く圧迫するため、頭痛が悪化する傾向にあります。
また、副鼻腔には前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4か所があり、膿が溜まる場所によって痛む場所が変わることも特徴です。
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症、花粉症やアレルギー性鼻炎などが主な原因です。
治療法
副鼻腔炎が原因で頭痛が起きている場合、まずは原因である副鼻腔炎の治療が必要です。
抗炎症薬や抗菌薬などを使った投薬治療を中心に行い、改善されない場合は手術を行うケースもあります。
副鼻腔炎には急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎の2通りがあり、急性の副鼻腔炎を繰り返すと慢性副鼻腔炎に移行してしまうことがあるため、早めに適切な治療を受けることが大切です。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、日常的に生じる頭痛の中でも多く見られる頭痛です。
後頭部や首筋にかけて、頭をぎゅーっと締め付けられるような圧迫感や、重苦しいような痛みを感じます。
症状や原因
緊張型頭痛は、頭を締めつけられるような鈍い痛みが特徴です。ダラダラ痛みが続くことが多く、肩こりや首こりを併発することもあります。
片頭痛とは異なり、我慢できないほど痛みが強くなることは少なく、「下を向いていると頭が重たくなる」「デスクワークで長時間前屈みの姿勢を続けたり、同じ姿勢をしていると痛みが出る」などが特徴です。
緊張型頭痛の原因ははっきりとはわかっていませんが、悪い姿勢や長時間のデスクワークといった身体的なストレスと精神的なストレスが複雑に絡み合って起こると考えられています。
治療法
緊張型頭痛の場合、頻度が低く日常生活に支障もなければ治療は必要なく、筋肉をほぐしたり、ストレス解消をしたりなどで対処します。
ただし、頭痛の頻度が高い場合や症状が重い場合は別の病気が隠れている可能性もあり、病院での検査や治療が必要です。
脳動脈解離(椎骨動脈)
下を向くと頭が痛い場合で注意したいのが、脳動脈解離(椎骨動脈)です。
40代〜50代の男性に多く見られ、場合によってはくも膜下出血や脳梗塞につながることもあるため、早期発見・早期治療を行う必要があります。
症状や原因
脳動脈解離は、内膜、中膜、外膜と3層になっている脳動脈のうち内側にある膜が裂けることで発症します。
脳動脈解離の中でも日本人に多く見られるのが「椎骨動脈(首の骨の中にある動脈)」に起こる椎骨動脈解離で、多くは片側の後頭部〜うなじにかけて突然強い頭痛が生じ、痛みが持続することが特徴です。
原因不明で起こることもありますが、強い衝撃、首を過度に曲げる動作、首の急なひねり動作などが原因となるケースもあります。(交通事故やゴルフのスイング、カイロプラクティックなど)
椎骨動脈解離はレントゲンでの診断ができず、寝違えや片頭痛として誤診・見逃されてしまうことが少なくありません。
診断のためにはMRI検査が必要となるため、椎骨動脈解離が疑われる場合は早めに脳神経外科を受診し、MRI検査を受けましょう。
治療法
椎骨動脈解離と診断された場合、まずは血圧管理や抗凝固薬や抗血小板薬を使用した服薬治療を行うケースが多いです。
動脈解離が進行するケースなど状態によっては、血管内手術や開頭手術を行うこともあります。
椎骨動脈解離は脳梗塞やくも膜下出血を引き起こすリスクがあるため、早めに病院を受診し適切な治療を受けましょう。
脳疾患の可能性も!頭痛以外の注意が必要な症状
頭痛が起こる原因はさまざまですが、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2つに分けられます。
「一次性頭痛」は脳疾患などの病気を原因としない頭痛で、片頭痛や緊張型頭痛などの一般的なよくある頭痛です。
一方、「二次性頭痛」は脳や脳血管の病気が原因となっており、放置すれば命にかかわります。頭痛以外にも以下のような症状がある場合は二次性頭痛の可能性があるため、ただちに病院を受診しましょう。
- 体の片側の麻痺やしびれ
- 手足に力が入らない
- 表情の歪み
- ものが二重に見える
- 意識が遠くなる
- 体がふらつく
- 言葉が出にくい、ろれつが回らない
- 視力低下
- めまい
- 吐き気、嘔吐
- けいれん
- 発熱
また、外傷後に突然頭痛が起こった場合や、今までに経験したことのないような激しい頭痛が起きた場合もすぐに病院を受診する必要があります。
下を向くと頭が痛いときに自分でできる対処法
下を向くと頭が痛くなる原因が片頭痛や緊張型頭痛であれば、以下のような方法で痛みを和らげることが可能です。
- 鎮痛剤を服用する
- 姿勢を良くする
- ストレッチやマッサージ
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
鎮痛剤を服用する
痛みがつらいときは、鎮痛剤を服用することで、痛みを抑えられます。
ただし、鎮痛剤では頭痛の根本的な治療はできません。鎮痛剤はあくまで病院を受診するまでの一時的な対処法と考え、なるべく早めに病院を受診しましょう。
注意したいのが、鎮痛剤の飲み過ぎによって起こる「薬物乱用頭痛」です。
薬物乱用頭痛は長期にわたり鎮痛剤を服用している片頭痛または緊張型頭痛持ちの人に多く見られ、痛みの程度や頻度が増え、頭痛の症状が悪化していきます。
薬物乱用頭痛は市販の鎮痛剤を服用して起こる場合がほとんどであるため、市販薬の飲み過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
姿勢を良くする
緊張型頭痛は、猫背やストレートネックなどの悪い姿勢、長時間の同じ姿勢なども原因の一つです。
姿勢が悪いと、体に余計な負担がかかります。肩こりや首こりを悪化させ、緊張型頭痛を引き起こす原因となるため、正しい姿勢を心がけましょう。
ストレッチやマッサージ
頭痛の改善には、ストレッチやマッサージが効果的です。
特に、緊張型頭痛は筋肉の血行が悪くなることが原因の一つであるため、ストレッチで首や肩まわりをほぐしたり、マッサージで血行を促したりして、筋肉の緊張をとってあげましょう。
デスクワークの際はどうしても同じ姿勢が続きがちです。1時間に1回は10分程度の休憩をとり、ストレッチで軽く首や肩を動かすようにしましょう。
頭痛の根本的な治療は医療機関の受診が必要
頭痛がつらい場合、鎮痛剤や姿勢の改善、ストレッチやマッサージで一時的な対処はできますが、根本的な治療には医療機関の受診が必要です。
単なる頭痛ではなく、何か重大な病気が隠れている可能性はゼロではありません。「軽い頭痛だと思って放置していたら、脳腫瘍が進行してしまっていた」というケースもあります。
ここでは、頭痛の受診の目安や受診時のポイントについて解説します。
受診の目安について
命に別状のない「一次性頭痛」か、放置すると危険な「二次性頭痛」であるかは、患者さんがご自身で正しく診断することはできません。
重大な病気を見逃してしまうリスクがあるため、気になる頭痛があればなるべく早めに病院を受診しましょう。
また、以下のような症状がある場合は時間を問わず緊急で病院を受診する必要があります。
- 外傷後に突然頭痛が起こった
- 今までに経験したことのないような激しい頭痛がある
- 突然強い頭痛が起こった
- 痛みがどんどん悪化する
- 発熱している
- 言葉が出てこない、意識がはっきりしない、体が動かしにくい、物がぼやけて見えるなどほかの症状がある
頭痛の症状や頻度を記録しておくと診断に役立つ
病院を受診する際は、自分の頭痛について記録しておくと診断に役立ちます。
- 頭痛の持続時間、起こる頻度
- 痛み方
- 痛む場所
- どんなときに頭痛が起こるか
- 頭痛以外の症状
片頭痛による重度の頭痛には、一般的な鎮痛剤が効かないことも少なくありません。病院では、トリプタン系薬剤やエルゴタミン製剤などを使い、症状や原因に合わせた治療が可能です。
頭痛の原因に合った治療を受けるためにも、自分の頭痛についてメモしておきましょう。
気になる頭痛がある方は脳ドックがおすすめ
「頭痛の原因がわからず心配」「つらい頭痛に悩まされている」など、気になる頭痛がある方は、脳ドックを受けるのがおすすめです。
脳ドックとは、脳MRI検査や脳MRA検査、頸部MRA検査などを行い、脳疾患リスクを早期発見するための検診コースのことです。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックの脳ドックでは、脳の検査に加えて血液検査(がん腫瘍マーカー含む)、DWIBS(全身がん検査MRI)も行います。
頭痛がある方はもちろん、気になる症状がない方も脳ドックを受けていただくことが可能です。
まとめ
下を向くと頭が痛くなる原因はさまざまで、片頭痛や緊張型頭痛、副鼻腔炎、脳動脈解離などが考えられます。
頭痛は多くの方が経験する症状である一方で、命にかかわる重大な病気が隠れている可能性もあり、放置は危険です。
病気の早期発見のためにも、気になる頭痛がある場合は放置せず、早めに病院を受診しましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは脳ドックや「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」の資格を取得した医師による外来診療を行っています。頭痛にお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。