脳の疾患を早期発見し、早期治療が可能になる脳ドックですが、何歳から受けるべきなのか不安に感じる方もいます。
周りで脳血管疾患を患っている人がいたり、脳ドックを受けた話を聞いたりすると、余計に自分は大丈夫かと思ってしまうことでしょう。
この記事では、脳ドックは何歳から受けるべきなのか、受けた方がよい方、見つかる病気などを紹介します。
脳ドックを受けるか迷っている方は、ぜひご覧ください。
脳ドックは何歳から受けるべき?
脳ドックは、30歳を過ぎたら受診した方がよいでしょう。また、受ける頻度を迷う方も多いです。
ここでは、脳ドックを受けた方がよい理由や受診の頻度を紹介します。
30歳を過ぎたら脳ドックを受ける
厚生労働省が発表している『令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況』によると、日本人の脳血管疾患で死亡順位は4位です。
また、30歳を超えると徐々に脳血管疾患での死亡率が高まり、年齢を重ねるごとにさらに増加していきます。
脳血管疾患は、不規則な睡眠やバランスの悪い食生活、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどが長年続くことによる生活習慣病が発症のリスクを高める原因となることがあります。
そのため、健康診断で生活習慣病を指摘されはじめる30歳以降から、早めの脳ドックを受けることがおすすめです。
受診頻度の目安
脳ドックは、1度受けた際に異常が見つからなければ1~3年に1度の受診がおすすめです。
しかし、年齢が上がるにつれて脳血管疾患の死亡率は高まるため、50歳を超えたら異常がなくても1年に1度は受けるようにしましょう。
また、これらの頻度はあくまでも目安となるため、直接脳ドックを受けたクリニックの医師の判断に従うことも重要です。
医師から次の脳ドックを指定された場合は、その頻度を守るようにしてください。
対象年齢以外でも脳ドックを受けた方がよい人
脳ドックは30歳を超えたら受けた方がいい検査ですが、対象年齢より若い方もリスクのある方は受診をおすすめします。
ここでは、対象年齢以外でも脳ドックを受けた方がよい方を紹介します。
生活習慣病を患っている
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を患っている方は、対象年齢にかかわらず脳血管疾患のリスクが高いと判断されるため、脳ドックの受診をおすすめします。
高血圧は血管壁に持続的な負荷を与え、動脈硬化を促進することで、脳梗塞や脳出血のリスクを上昇させます。
糖尿病は、血管をふさいでしまうことで血液の粘度があがり、結果的に脳梗塞の危険を高めます。
脂質異常症は、血管内にプラークを形成し、動脈硬化を進行させるとされます。
これらの生活習慣病は、初期段階での自覚症状がほとんどないため、知らないうちに進行していることがありますが、定期的な健康診断の受診によって指摘されることも多いです。
脳ドックでは、MRIやMRAで脳や脳血管の状態を詳しく観察できるため、脳血管疾患のリスクを評価できます。
生活習慣病は、相互に関連し合っていて複合的に脳血管疾患のリスクを高めるため、早期発見、早期治療のためにも脳ドックを受診し、生活習慣の改善や適切な治療を受けましょう。
心筋梗塞や狭心症を患っている
心筋梗塞や狭心症など、虚血性心疾患を患っている方の場合、脳ドックの受診が推奨されます。
心臓と脳は、全身の血液循環に重要な役割を果たしており、心筋梗塞や狭心症の原因となる動脈硬化は全身の血管に広がっている可能性があります。
心臓の機能が低下すると、脳への血流が減少し、心臓内に形成されている血栓が脳にも形成されて塞栓症を起こす可能性も考えられます。
また、心筋梗塞や狭心症の治療に使用される凝固薬や抗血小板薬は、出血性脳卒中のリスクを高める可能性もあり、脳ドックでMRIやMRAによって脳内の出血や脳腫瘍の有無を確認することが重要です。
脳ドックは、脳だけではなく頸動脈の評価ができる検査でもあります。頸動脈の狭さは動脈硬化が原因であるため、脳梗塞のリスクを早期発見し、適切な治療を行うことにつながります。
喫煙・飲酒歴が長く多い
喫煙や過度の飲酒は、脳血管疾患のリスクを高めることで知られています。
喫煙は、動脈硬化を促進したり、血液の粘度を上昇させ血栓形成のリスクを高めたりすることで、脳梗塞や脳出血を発症する可能性が上昇します。
過度の飲酒は、アルコールによって血圧が上昇し、心臓血管疾患のリスクを高めるため、これらを複合的に考えると、脳梗塞や脳出血のリスクが高まることになるでしょう。
また、喫煙や過度の飲酒は生活習慣病のリスク因子でもあるため、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの評価も同時に行うことが重要です。
家族に脳血管疾患の発症歴がある
脳血管疾患には遺伝子関与が考えられるため、家族に脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの発症歴がある方は、年齢にかかわらず脳ドックを受けた方がよいでしょう。
特に、両親、兄弟姉妹など近い親族に脳血管疾患がある場合、本人の発症リスクも高くなります。
原因としては、遺伝的に受け継がれる障害や、家族内での同様の生活習慣が影響していると考えられます。
家族内で脳血管疾患の発症歴がある方は、MRIやMRAを受けることで発症前の病気に気付くことも可能なため、早めの受診をおすすめします。
日常的に頭痛が続く
頭痛は、脳疾患の初期に現れる代表的な症状であるため、疲労や緊張によるものと自己判断せずに、慢性的に頭痛が続く方は脳ドックの受診をおすすめします。
頭痛にはさまざまな種類がありますが、特に注意が必要なのはこれまで感じたことがないような激しい頭痛、徐々に悪化していく頭痛などで、重大な脳疾患の初期症状である場合があります。
さらに、慢性的な頭痛は無症候性脳梗塞や脳血管の狭さなど、潜在的な脳血管疾患の可能性が否定できません。
日常的な頭痛は、生活にも支障をきたすことがあるため、早めに脳神経外科を受診して脳ドックを受けることが推奨されます。
脳ドックで見つかる病気
脳ドックを受けることで、さまざまな脳疾患を見つけたり、リスクを評価したりできます。
脳ドックでは、どのような病気を見つけられるのでしょうか。
ここでは、脳ドックで見つかる病気について詳しく紹介します。
ラクナ梗塞
ラクナ梗塞は、脳の深部にある細かい血管が詰まって起こる小さな脳梗塞で、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが原因です。
半身まひや話しにくさ、しびれなどが初期症状として挙げられますが、これらが1時間以内に自然に消失する場合は一過性脳虚血発作と呼ばれるラクナ梗塞の前兆である可能性があります。
MRIで診断が行われ、拡散強調画像という撮影方法によって発症初期のラクナ梗塞を発見できます。
発症直後の治療は点滴、服薬などが行われ、リハビリテーションなどで症状の改善を図ります。また、内服を継続して再発を予防することも重要です。
無症状で進行することも珍しくないため、脳ドックを定期的に受けて早期発見、早期治療をするようにしましょう。
脳腫瘍
脳腫瘍にはさまざまな種類がありますが、主な症状として頭痛や吐き気、視力低下、しびれ、言語障害などが挙げられます。
しかし、腫瘍が小さい場合や発生部位によっては無症状であることも多く、MRI検査によって腫瘍の大きさや位置、周囲の脳組織との関係などを確認する必要があります。
腫瘍の種類や悪性度によって治療は異なりますが、手術や放射線治療、薬物療法が取り入れられるのが一般的です。
脳腫瘍は早期発見が重要です。しかし、症状がないことも多いため、定期的な脳ドックで無症状の段階で脳腫瘍を発見する必要があります。
脳動脈瘤
脳動脈瘤は、脳の動脈壁がもろくなったり、血管壁が薄くなったりすることによってこぶや風船のように膨張した状態です。
主な原因は先天的な血管壁の異常ですが、高血圧や喫煙、過度の飲酒、疲労などさまざまな原因も考えられます。
通常は脳動脈瘤ができても無症状のことが多く、MRAでの早期発見が重要です。
脳動脈瘤が大きくなると、目の上が痛くなる、顔の麻痺、視野異常などが現れ、破裂すると激しい頭痛や吐き気に襲われてくも膜下出血の原因になります。
治療は大きさや形状などによって異なりますが、開頭クリッピング術や血管内治療が行われます。
無症状の場合は脳ドックでの定期的なスクリーニングが重要で、破裂する前に検査によって予防することが重要です。
頸動脈の狭窄
頸動脈の狭窄は、心臓から脳に向かう頸動脈に動脈硬化が起こり、脳への血流が低下して狭窄部で形成された血栓が脳血管を詰まらせ、脳梗塞を発症するリスクがあります。
頸動脈が狭窄していること自体は無症状の場合が多いですが、脳が血流不足に陥ると、言葉が出にくくなる、手足のしびれや動きにくさ、立ち眩みやめまいといった症状が現れます。
脳ドックでは、MRIやMRAを用いて脳梗塞の存在や脳内頸動脈の状態を観察できます。
状態によって治療方法は異なり、手術や内服薬での治療が検討されます。
無症状で進行することが多いため、定期的な脳ドックでのスクリーニングが重要です。
脳ドックのメリット・デメリット
脳ドックは重大な疾患を発見するために重要な検査ですが、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
メリットだけではなくデメリットも理解したうえで検査を受けることが推奨されます。
ここでは、脳ドックのメリット、デメリットを紹介します。
メリット
脳ドックは、MRIやMRAによって、脳の状態を直接確認でき、異常を早期発見できるのが最大のメリットです。
脳血管疾患のなかには、経過観察をしても問題ないものもありますが、リスクを抱えていることを知らずに生活するのは危険性が高いです。
また、生活習慣病が脳血管疾患の原因になることもあるため、脳の異常が発見された場合、生活習慣を改善する必要があります。
生活習慣を改善することは、そのほかのさまざまな病気の予防につながり、自分1人では難しかった禁煙なども医師の手助けによって叶うことがあるでしょう。
デメリット
脳ドックのデメリットを挙げるとすれば、検査時の閉鎖的な環境や、音のうるささ、検査の長さなどがあります。
例えば、閉所恐怖症の方や、大きな音が苦手な方にとっては、MRIやMRAの検査は苦痛を伴う検査といえるかもしれません。
しかし、現在の脳ドック検査は、閉鎖的な環境ではなく開放的な装置も開発されており、音の軽減のためのヘッドフォンや耳栓を使用することもできます。
検査時間が長いと感じることもあるかもしれませんが、今後の人生において重大な疾患が発見できるとなれば、その時間も必要と感じられるでしょう。
また、デメリットとして病気が見つかったときの精神的ダメージを考える方もいますが、脳血管疾患は、放置すると生命にかかわることもあるため、早期発見によって早期治療や経過観察を行い、健康を保ちましょう。
まとめ
脳ドックは、30歳頃から受けた方がよい検査です。しかし、年齢に限らずリスクが高い方は、積極的に検査を受けることをおすすめします。
デメリットもある検査に感じられますが、多くのデメリットは医療機関の努力や患者さんの多少の我慢によって解決できるものです。
脳血管疾患のリスクが高い方は、特に脳ドックの受診を検討してみてください。
神奈川県相模原市の脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、病気の早期発見、早期治療を目的とした脳ドックを実施しています。
脳の検査以外にも、脳血管、頸部の血管、脳血流の検査、血液検査などさまざまな検査によって生活習慣病も検知し、リスクを軽減する治療をご提案させていただきます。
脳ドックを検討している方は、脳神経外科 福島孝徳記念クリニックにお気軽にご相談ください。