さっきの記憶がない!原因として考えられる病気と症状・治療方法・予防方法を紹介

物忘れ

物忘れは年齢とともに誰にでも起こるものですが、さっきの記憶がないなど、限定的な記憶障害があると何かしらの疾患である可能性があります。

記憶がなくなる可能性がある疾患はいくつかあるため、原因や症状を把握して適切な治療をすることが重要です。

この記事では、さっきの記憶がないときに原因として考えられる4つの病気の原因、症状、治療方法、予防方法を紹介します。

記憶に関して不安を抱えている方、治療方法や予防方法が知りたい方は、ぜひご覧ください。

さっきの記憶がない?原因として考えられる病気

物忘れ

ついさっきの記憶がないとなると、どのような病気が隠れているのか心配になってしまいます。日常生活に大きく影響を及ぼすため、早期治療が重要です。

ここでは、原因として考えられる病気の原因、症状、治療方法、予防方法について詳しく紹介します。

一過性全健忘

一過性全健忘(TGA)とは、頭に外傷がないにもかかわらず一時的に記憶がなくなるのが特徴です。

しかし、自分の名前や周囲の人の名前、顔、年齢などはしっかり記憶にあり、今自分がなぜここにいるのか、何をしているのかがわからなくなるのが主な症状です。

発症すると、その間自分が何をしているか記憶することが難しく、周りの人に自分が何をしているのか何度も聞いてしまうことも珍しくありません。

原因

一過性全健忘の原因は、完全に解明されていませんが、以下のいくつかの理論があります。

  • 脳内の一時的な血流不足
  • ストレス
  • 片頭痛
  • 激しい運動
  • 突然の気温変化
  • 過度の感情的な興奮

仮説の一つとして、脳内に血流が不足すると、記憶形成に関与する脳の海馬領域への血流が一時的に減少し、一過性全健忘を引き起こすのではないかといわれています。

そして、血流不足の原因になる可能性として、ストレスや激しい運動などが関与していると考えられます。

さらに、静脈逆流によって血流が正常に脳へ届かなくなる場合や、心的外傷(トラウマ)や極度の心理的ストレスが一過性全健忘を引き起こす要因として挙げられているものの、決定的な証拠は少ないです。

単一の要因ではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症する可能性が高いでしょう。

症状

一過性全健忘は、突然の記憶喪失が現れるのが特徴で、通常は数時間から24時間程度続きます。

特徴的な症状として、直近の出来事を覚えていないことが挙げられ、新しい情報を記憶できずに数分前の出来事もすぐに忘れてしまいます。

よく現れる行動として、「ここはどこか?」「自分は今何をしていたか?」といった質問を何度も繰り返すのが典型的です。

一方で、自分の名前、家族の顔、過去の人生経験などにはほとんど影響を受けず、知的機能、言語能力、認識能力には通常変化は見られません。

混乱や意識障害を伴うこともなく、時間の経過とともに短期間で回復するのが一般的です。

治療方法

一過性全健忘の治療は、主に自然な回復を待つことが中心になります。通常、数時間から24時間以内に完全に回復して、後遺症が残ることはほとんどありません。

発症中に医療機関を受診した場合、行われるのは他の重大な神経疾患との鑑別診断です。

脳卒中や脳梗塞は、記憶障害を引き起こす可能性が高いため、MRI検査によって脳の異常を確認することが一般的です。

検査によって異常が見つからなければ、一過性全健忘と診断されます。

一過性全健忘そのものに特効薬はありませんが、必要に応じて片頭痛の治療やストレス管理のサポートが提供されます。

症状を発症しているときは、不安になっている患者さんに対して周りの医師や看護師が安心感を与えるサポートが必要です。

予防方法

完全に一過性全健忘を防ぐ方法は確立されていませんが、リスクを低減させるために以下の対策が推奨されています。

  • 片頭痛の適切な管理
  • ストレス対策
  • 十分な睡眠
  • 規則正しい生活習慣

片頭痛がある方は、一過性全健忘の発症リスクが高いとされます。そのため、片頭痛が日常的に起こる方はどのような状況で片頭痛を発症するかを特定し、それらを避けることで間接的に一過性全健忘を予防できます。

過度なストレスや心理的負担も一過性全健忘の誘因になる可能性があるため、ストレス管理や十分な睡眠、規則正しい生活を心がけましょう。

解離性健忘

自分がした体験を覚えていなかったり、部分的に思い出せないことを健忘と言いますが、原因が精神的である場合は解離性健忘と呼ばれます。

自分が誰なのか、何をしていたかなど、正常時には自覚している日常の情報、自分の過去などが思い出せなくなります。

原因

解離性健忘は、主に精神的なショックや極度のストレスによって引き起こされます。

強い精神的負荷を受けると、心がその痛みを避けるために記憶を遮断して防衛することがあります。

交通事故、虐待、自然災害、戦争など生命に関わる脅威や感情的に耐え難い経験が引き金となることが多いです。

こういった経験がトラウマとなり、無意識に記憶を思い出さないようにするために全健忘の状態が生じます。

また、幼少期の虐待、不安定な家庭の状況も引き金になりやすく、暴力的な環境で育った、十分な愛情を受けられなかったなどの場合、後年のストレスやトラウマによって解離性健忘が発症する可能性が高まります。

症状

解離性健忘の主な症状は、自分が今までに経験した過去の記憶が突然失われることです。

症状としては、特定の出来事に関連した記憶だけではなく、自分が誰か、どこに住んでいるか、何をしていたかといった基本的な情報も思い出せなくなることがあります。

記憶喪失は一時的なものもあれば、長期にわたることもあり、個々のケースによって大きく異なります。

見た目は健康に見えることが多く、外傷や身体的な異常はないことが一般的で、記憶を失っている間も通常通り生活できます。

治療方法

解離性健忘の治療は、心理療法が中心です。一般的には、記憶の回復と患者さんの心理的安定を目指すアプローチが用いられます。

患者さんの不安や混乱を和らげつつ、認知行動療法や精神力動療法によって、感情を再体験することで回復を目指します。

さらに、患者さんの潜在的な記憶を引き出すために、催眠療法も効果的な場合があります。

予防方法

解離性健忘の予防は、トラウマや極度のストレスを適切に管理することが重要です。心理的なストレスを蓄積させる前に早期に対処し、症状が発症するリスクを低減します。

ストレス管理には、自分がリラックスできる環境を見つけることが重要です。

さらに、信頼できる人に感情を話したり、アートや音楽などの活動で感情を外部に表現するなども効果的です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、65歳以上の方に多く見られる認知症の種類で、脳の神経細胞が減って小さく萎縮することで症状が現れます。

病気が進むと、物忘れや体験そのものを忘れてしまうなど、さまざまな症状がゆるやかに進行していきます。

原因

アルツハイマー型認知症の主な原因は、脳内の神経細胞が変性することや、死滅することに関連しています。

脳内の神経細胞に異常が起こると、記憶や認知機能に障害が発生し、進行するとともに広範囲にわたるのが特徴です。

脳内に異常なタンパク質であるアミロイドβが蓄積されることや、タウタンパク質に異常が起こると、神経細胞同士のコミュニケーションが破壊されていきます。

また、遺伝的要因も関与しているとされ、特にアポリポタンパクEという遺伝子の特定の型をもつ人は、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高いとされます。

ただし、すべての発症例が遺伝というわけではなく、加齢が大きなリスク要因です。

そのほかにも、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣や、社会的孤立といった環境要因が複合的に関与して、脳の健康を損なうのが特徴です。

症状

アルツハイマー型認知症は、以下のように段階的に進行していきます。

  • 初期……短期的な記憶障害
  • 中期……長期的な記憶障害
  • 末期……コミュニケーション能力の欠如、日常動作への支援が必要

初期症状として、短期記憶が影響を受けるため、最近の出来事が思い出せない、どこに物を置いたか忘れてしまう、言葉がでてこないといった症状が見られますが、日常生活への影響は比較的軽いでしょう。

中期になると、記憶障害が進行して、過去の記憶や周りの人の顔や名前を忘れてしまうことがあります。感情の変動や気分の不安定さが増すのも特徴です。

末期には、コミュニケーション能力がほとんど失われ、基本的な日常動作に支援が必要になるうえに、身体機能が低下して寝たきりになったり、合併症が生じたりする場合もあります。

治療方法

アルツハイマー型認知症は、根本的な治癒を目指すのではなく、症状の進行を遅らせることが目的となります。

治療に用いられる薬は、アセチルコリンという神経伝達物質の分解を遅らせる薬で、神経細胞間の情報伝達を改善して症状の進行をゆるやかにします。

薬物療法以外には、認知機能を維持、改善するためのリハビリテーションや音楽療法、生活環境の改善などがあります。

予防方法

アルツハイマー型認知症を予防するには、生活習慣を改善させることが重要とされます。特に、定期的な運動は認知症のリスクを低減させるとされています。

有酸素運動は、脳の血流を促進し神経細胞の健康維持を助けるため効果的です。

また、読書やパズルなどは脳を活発に保つ効果があります。

さらに、血圧、コレステロール値、血糖値の管理も重要です。生活習慣病は脳血管に悪影響を及ぼし、認知症のリスクを高めるため、生活を整える必要があります。

うつ病

うつ病は気分障害の1つで、何をしても楽しめない、落ち込むことが多いなどの精神的な症状、眠れない、食欲がないなどの身体的な症状が現れます。

脳がうまく働かなくなることで、さっきの記憶がないという状態に陥ることもあり、正確な診断が求められます。

原因

うつ病で記憶がなくなる理由は、脳の機能が低下するためです。特に、記憶に関する脳の領域である海馬や前頭前野が影響を受けることが大きいでしょう。

脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどのバランスが崩れ、神経回路の働きが正常に機能しなくなり、記憶にも障害が生じます。

さらに、心理的な要因も関与していると考えられます。うつ病では、集中力や注意力が低下することで、物事に対する興味が失われ、日常の些細な出来事を記憶する能力が減退してしまうのです。

うつ病で記憶がなくなる原因を特定するには、さまざまな角度からの診断が必要になります。

症状

うつ病による記憶障害の症状は、短期記憶やワーキングメモリの障害として現れます。例えば、直前に行ったこと、話した内容などが思い出せずに日常生活で混乱を引き起こします。

さっき話していた内容が思い出せない、どこに物を置いたかわからない、何を食べたか忘れてしまうなどが頻繁に起こり、自己能力や記憶力への自信を失い、さらに精神的な負担を抱える悪循環に陥ることもあります。

治療方法

うつ病の記憶障害を治療するには、薬物療法と心理療法が効果的です。

薬物療法は、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスを改善し、脳の機能を正常に戻す効果が期待できます。

心理療法では、認知行動療法が一般的です。否定的な思考パターンを認識してそれをポジティブな思考に変える手法で、記憶力の回復が見込めます。

予防方法

うつ病による記憶障害を予防するためには、日常生活での自己管理が重要です。

ストレスを適切に管理することや、睡眠の質を高めること、適度な運動を取り入れることなどが、脳の回復と記憶力の維持に役立ちます。

また、社会的なつながりを維持することも重要です。友人や家族など気を許せる人に定期的に話を聞いてもらうようにして、無理のない範囲でコミュニケーションと休息をとりましょう。

まとめ

さっきの記憶がないと感じることは、何か重大な病気が隠れているのではないか、このまま記憶が失われるのではないかと不安に感じる原因になります。

しかし、気が付いた時点で適切な治療を受けることで、改善する可能性もあります。

神奈川県相模原市の脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、さまざまな角度から脳の病気を発見できます。

早期診断、早期治療を第一に診療しているため、不安なことがあれば脳神経外科 福島孝徳記念クリニックまでぜひご相談ください。

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