脳動脈瘤

脳動脈瘤

脳の血管の一部が膨らむ病気で、脳動脈瘤はくも膜下出血の原因となります。くも膜下出血は、約60-70%の確率で、死亡に至ったり、寝たきりになってしまう病気です。最近は、破裂する前に発見することが大切であり、そのために脳ドックを推奨しております。脳動脈瘤の発見は、脳ドックの最大の目的と言って過言ではありません。

脳ドックで発見されたり、偶然検査したMR検査で脳動脈瘤を指摘された場合は、大きさと形、脳動脈瘤の部位によって治療方法を検討します。治療方法としては、カテーテルによるコイル塞栓術と開頭手術によるクリッピング術があります。世界的にはカテーテルによる治療が主流でありますが、動脈瘤の形状によっては、カテーテル治療が困難な場合もあります。そのような脳動脈瘤に対しては、開頭し、直接脳動脈瘤を確認し、動脈瘤に血流が入らないように動脈瘤の根本に小さなクリップを行います。代表例をご紹介します。

脳ドックで発見された左内頸動脈と後交通動脈の分岐部から発生した動脈瘤の方です。

黄色矢印で示したのが、脳動脈瘤そのものです。周囲に細い血管が付着しているのがわかります(赤矢印)。丁寧な操作で、動脈瘤に付着している血管を全て剥がします。このような操作を行うことで、脳梗塞などの合併症を防ぎます。

下の写真は、ちょうどクリップを行なった状態です(黄色矢印)

特殊な薬剤を注射し、特殊なライトを照てることで、動脈瘤の血流が遮断され(黒くなっている水色矢印)、さらに周囲の重要な血管の血流が保たれていることがわかります(赤矢印)。

髪の毛の生え際から外側を切開し、できる限り傷が目立たないようにします。茶色の消毒液が付いている部位が切開している部位ですが、抜糸直後でも傷が目立ちません。

くも膜下出血の方

次の方は、くも膜下出血の方です。お仕事中に、頭痛と嘔気を自覚され、当院の外来を受診された方です。

ほとんどのくも膜下出血の患者様は、頭痛を自覚した後に意識障害を認めるので、救急車で搬送されることが多いですが、今回の場合のように、歩いて外来受診されることもあります。このような経験からも嘔気を伴うような頭痛は、注意する必要があります。

くも膜下出血を疑った際は、まず頭部CT検査を行います。左下図は、典型的なくも膜下出血の画像です。黄矢印の部位がくも膜下出血です。原因を調べるために、造影剤を使用したCTを行いました。(中央、右下図)血管からの膨らみを認め、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の診断となります。

緊急開頭クリッピング術を行いました。術中画像ですが、左図は、脳動脈瘤を確認した段階です。黄矢印は脳動脈瘤そのものです。周囲に出血があり、動脈瘤が破裂したことを示します。赤矢印は動脈瘤の根本から出ている重要な血管です。

動脈瘤にクリップした直後の状態です。黄矢印の部位の動脈瘤は消失しており、赤矢印の部位の重要な血管は、温存されております。

特殊な薬剤を投与し、さらに特殊なライトを照射することで、視覚的に動脈瘤が消失し(黄矢印)、重要な血管が温存されていること(赤矢印)を確認しております。

術後数日経過した頭部CT検査ですが、黄矢印の位置のくも膜下出血は消失しています。 造影剤の使用した頭部CT検査でも、動脈瘤が消失したことを確認しております。(中央の黄矢印)右下図は、開頭した部位を示しています。

くも膜下出血の手術は、基本的に緊急手術であり、剃毛することがほぼ99%ですが、当院では、くも膜下出血の治療後の生活も考え、無剃毛で手術させて頂いております。黄矢印が皮膚切開部ですが、ほとんど目立ちません。