類上皮腫
非常に稀な腫瘍です。胎生期(お母さんのお腹にいるとき)に本来消失するはずであった組織が、遺残した腫瘍です。腫瘍自体は、非常に特徴的で、白く輝いている腫瘍です。その特徴から“真珠腫”と言われていて、一度見たら忘れない腫瘍です。この白く輝く腫瘍は、吸引管という器具で、簡単に吸引できます。しかし、その白く輝く腫瘍を包む“被膜”を残すと再発することがわかっております。この“被膜”を全て摘出するのが、非常に難しく、脳神経外科の手術の中でも全摘出するのが非常に困難な腫瘍の一つです。また、腫瘍が大きくなっても特異的な神経症状が出現しにくいため、かなり腫瘍が広がった状態で発見されることが多いです。当院では、かなり腫瘍が広がった状態であっても、できる限り小さな開頭で手術を行っております。
症例 30代 女性
30代の女性で、右顔面の疼痛を自覚され、近くのクリニックを受診されました。三叉神経痛の診断で内服加療が開始となり、頭部MRI検査を行い、類上皮腫と診断されました。
MRI検査です。
黄色の矢印で示しているのが、腫瘍本体です。
本来は三叉神経が走行している部位ですが、腫瘍が充満し、三叉神経が確認できない状態です。
DWIという撮影方法で、白くみえるが特徴です。
実際の術中画像です。
白く見えるのが腫瘍本体です。
真珠のようにひかり輝いて見えます。(黄矢印)
被膜を摘出しているところです。(赤矢印)周囲の脳組織や神経、血管に付着している被膜を摘出するのがこの手術の大事なところです。
腫瘍摘出後の術中画像です。
深部に三叉神経が確認できます。(黒矢印)
周囲の腫瘍が摘出されていることを確認しています。
術後の頭部CT検査の画像です。
開頭した範囲(黄色丸)ですが、500円玉程度であり、隙間に骨セメントを注入し、できる限り平らにすることで、凸凹せず元通りになるように心がけております。
抜糸直後の写真です。
剃毛していませんので、傷が目立つことはありません。術後の傷の大きさもかなり小さい範囲となっております。