髄膜腫

髄膜腫

脳腫瘍の中で、最も頻度の多い良性腫瘍です。この診断を受けても、まず安心して頂きたいことは、90%以上の確率で良性腫瘍であるということです。症状が出現してから発見される髄膜腫は、かなりの大きさになっていることが多く、症状も出現しているため、手術を受けれる方が多いと思います。

問題は、症状がない状態で発見された髄膜腫に対する治療です。病院やクリニックを受診し、たまたま受けた MR検査で髄膜腫を指摘された場合です。腫瘍が小さい場合は、多くの病院で経過観察の方針となります。

しかし我々のチームは、症状が出現していないと理由での経過観察は勧めておりません。手術を行う立場の脳外科医にとっては、腫瘍ができるだけ小さな時期に摘出してしまう方が、傷も小さく合併症のリスクもできるだけ小さくできるからです。腫瘍が大きくなってからだと、周囲の正常の組織を巻き込み合併症のリスクは高くなり、腫瘍が大きくなればなるほど傷も大きくなります。『腫瘍はまだ大きくなっていないので、手術は必要ありませんよ』という言葉は、耳には優しい言葉ですが、本質は、『合併症のリスクが高くなるのを待ちましょう、傷も大きくなっていくのを待ちましょう』ということなのです。

もちろん、小さな1cm以下の腫瘍への手術を勧めているわけではありません。髄膜腫のような手術が第1選択となるような疾患は、手術する脳外科医が、画像をフォローし適切な手術時期を決めることが大切だと考えております。

代表例を示します。

40代の男性の方

40代の男性の方です。腰痛の精査でたまたま検査したMR検査で発見された髄膜腫の方です。前頭葉の中心に白く見えるものが髄膜腫です。(黄色矢印)

造影剤を使用したMR検査でこのように明瞭に撮影できます。かなり大きな腫瘍ですが、ほぼ症状がない状態で発見されました。この大きさの腫瘍は、症状がなくても、できるだけ早期の手術が必要になります。

左の写真での、黄色矢印の部位が髄膜腫で、緑矢印が正常脳です。約1cm程度の隙間から4cm以上の腫瘍を摘出します。右の写真は摘出後の写真です。髄膜腫がなくなり空間ができています。(水色矢印)

30代の女性の方

30代の女性の方で、脳ドックで発見された方です。時折、頭痛は自覚されてましたが、ほぼ無症状で、脳ドックで偶然発見され、かなりの大きさの髄膜腫です。

このような大きさの腫瘍でも最低限の大きさしか皮膚切開を行いません。通常でしたら、6時間以上かかるような手術ですが、当院では、丁寧に迅速な手術を心がけており、3時間程度で手術終了しております。術後もMRI検査上全摘出できており、特に症状も問題なく、日常生活に戻られております。

術後の頭部CT検査の画像です。開頭した骨を戻した際に、周囲の骨との間に必ず隙間ができてしまいます。そのままにすると術後、皮膚の上から触れた時に、段差ができ、美容的に良くない状態になります。当院では、その隙間を骨セメントで埋めることで、美容的にも美しい状態を目指した手術を心がけております。