下垂体腫瘍

下垂体腫瘍

下垂体という脳の組織に発生する腫瘍です。ほとんどが良性腫瘍であります。

下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、ラトケ嚢胞(のうほう)など様々な種類の腫瘍があります。

下垂体とは、ホルモンを生成、分泌する組織であり、体の成長を促したり、男性や女性の特徴を形成したり、尿量のコントロールを行ったりする役割があります。そのホルモンを過剰に分泌する腫瘍と、ホルモンを分泌しない腫瘍があります。ホルモンを分泌する腫瘍(ホルモン産生腫瘍)は、ホルモンの影響で、外見的な特徴や特異な症状が出現することが多く、腫瘍が小さい状態で診断されます。また、ホルモンの分泌がない腫瘍は、腫瘍が大きくならないと症状が出現しないため、比較的大きな腫瘍で発見される場合が多いです。

また頭蓋咽頭腫という腫瘍は、胎児(母親のお腹にいるとき)のときに、消失、退化するべき頭蓋咽頭管という組織が残り、腫瘍化したものです。腫瘍の大きさによって多彩な症状が出現しますが、尿崩症(にょうほうしょう)という症状は頭蓋咽頭腫において特徴的です。尿量がかなり増加する症状であり、寝ているときに排尿で何回も起きてしまうことや、日中に1時間毎に排尿することになります。

下垂体腫瘍の治療方針としては、一部のホルモン産生腫瘍は、内服薬で腫瘍の縮小を期待できますが、基本的に手術が第1選択となります。特に視力障害、視野障害が出現している場合は、緊急手術になることもあります。大切なことは、できる限り大きくならないうちに発見し、視神経への影響、障害のリスクが低い状態で手術を行うことです。当院としては、症状がないからという理由のみで、ただ腫瘍が大きくなるのを経過観察する方針は致しません。腫瘍が大きくなったときのリスクと、腫瘍が小さい時に摘出してしまう利点を十分に検討し、治療方法を提案しております。手術としては、鼻の奥の粘膜を切開し、顕微鏡もしくは、内視鏡を使用し、腫瘍を摘出しますので、頭部や顔面に傷はつきません。

症例 60代 女性

60代の女性の方で、めまいを自覚し、近くの病院で、頭部精査したところ、発見され、手術の方針となり、当院受診されました。視神経に一部接触しており、手術の方針となりました。

MRI検査です。

黄色の矢印で示しているのが、腫瘍本体です。

赤色で示しているのは、正常下垂体です。本来は真ん中にある組織ですが、腫瘍によって右へ寄っているのがわかります。

また、緑色の矢印で示しているのは、視神経です。腫瘍が一部接触しているのがわかります。(橙色矢印)

実際の手術の写真です。

左鼻腔よりアプローチします。左鼻腔の粘膜を切開するので、頭部表面に傷はつきません。

実際の手術の写真です。

下垂体の周囲の骨をドリルで削っているところです。2.5cm程の隙間から深い場所を操作します。

実際の手術の写真です。

硬膜を切開した直後の状態です。少し腫瘍がでてきています。(黄色矢印)

実際の手術の写真です。

腫瘍をほぼ摘出した状態です。腫瘍上部に存在した膜(緑色矢印)が確認できれば、腫瘍が摘出できていることになります。

実際の手術の写真です。

腫瘍を摘出後、骨を削った部位に鼻の骨をはめ込み、できる限り元通りにします。このようにすることで、髄液漏を予防します。

術後のMRI検査です。

赤色で示しているのは、正常下垂体です。術前と比較すると元の中心の位置に戻っています。

また、緑色の矢印で示しているのは、視神経です。術前は腫瘍が一部接触していましたが、腫瘍が消失しております。

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