「生あくびが出ると、その後で頭痛が起こる」
「あくびが止まらない」
あくびは睡眠不足や疲れを感じたときなどに起こるよくある動作ですが、眠気もないのに起こる「生あくび」には思わぬ病気が隠れている可能性があります。
この記事では、あくびと生あくびの違い、生あくびが出る原因、生あくびの症状が起こることがある病気などについて詳しく解説します。
生あくびの症状が見られる病気の中には、脳腫瘍や脳卒中など、命にかかわる病気もあります。気になる症状がある場合は放置せず、早めに対処しましょう。
生あくびが出る理由・原因
主に眠気を感じたとき不意に起こる「あくび」ですが、そのメカニズムはまだはっきりとは解明されていません。
睡眠不足や疲労が溜まっているときなど、脳が酸素不足になったときに起こりやすい生理現象と捉えられています。
「生あくび」は通常のあくびとは区別され、眠気や疲れもないのに頻繁に起こるあくびのことを指します。
生あくびは緊張やストレスの影響で起こることもありますが、病気の影響によって起こっていることもあり、注意が必要です。
ここからは、生あくびが出る理由や原因について詳しく解説します。
緊張やストレスの影響
緊張やストレスは、生あくびが出る原因の一つです。
あくびには、自律神経が関係していると考えられています。
自律神経には身体の活動を活発化させる「交感神経」と身体のリラックス状態を促す「副交感神経」があり、この2つが無意識的にバランスを取ることで人間の体の働きを調整しています。
しかし、過度な緊張やストレスはこの自律神経のバランスを乱してしまいます。すると、その状態を元に戻そうとして、あくびが起こると考えられているのです。
体が緊張を和らげようとする一種の防衛反応だともいわれています。
病気によるもの
生あくびが頻繁に起こる場合、なんらかの病気のサインである可能性もあります。
例えば片頭痛では、生あくびは予兆症状の一つです。
また、命にかかわる重大な病気でいえば、脳の血流に問題が起こる脳卒中(脳梗塞、脳内出血)や脳腫瘍では、生あくびが症状として現れることがあります。
あくびは私たちにとって当たり前の行為でもありますが、だからといって軽く見てはいけません。何か異変を感じた場合は、早めに病院で詳しい検査を受けましょう。
生あくびの症状が起こることがある病気
生あくびが頻繁に起こる場合、以下のような病気の可能性を考慮する必要があります。
- 片頭痛
- 低血圧
- 狭心症
- 脳腫瘍
- 脳卒中(脳梗塞、脳内出血)
- その他
ここからは、生あくびの症状が起こることがある病気についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
片頭痛
生あくびは、慢性頭痛の一種である片頭痛の予兆の一つです。
片頭痛の発作が始まる前に、突然生あくびが繰り返し出ることがあります。これは、血管の収縮や拡張によって引き起こされると考えられています。
片頭痛は脈打つように頭がズキズキ、ズキンズキンと痛むことが特徴で、痛みの程度も強いです。何も手につかなくなるほど強く痛むことも多く、階段の昇り降りや歩く、走るなど日常的な動作で悪化します。
痛みのほかにも吐き気、嘔吐、光・音・においに敏感になるといった症状が起こることも特徴です。
片頭痛に悩む人は多く、日本人の8.4%が片頭痛持ちだということが一般社団法人 日本頭痛学会の調査(※)からわかっています。
(※Sakai F, Igarashi H. Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997; 17(1):15-22.)
低血圧
低血圧も、生あくびが起こる原因です。
低血圧は言葉の通り血圧が低下した状態のことで、厳密な基準はありませんが、通常は収縮期血圧が100mmHg、拡張期血圧が60mmHg以下で低血圧とみなされます。
低血圧になり脳に送られる酸素が減ると、生あくびが頻繁に出ることがあります。
生あくびのほかにも低血圧では、全身の倦怠感(体がだるい)、めまい、頭痛、吐き気、胃もたれ、発汗、耳鳴り、動悸、不整脈など多岐にわたる症状が起こることが特徴です。
低血圧の症状は人によって違いがあり、一人で悩んでいる方も少なくありません。
体質や遺伝など原因がよくわからない低血圧もありますが、自律神経がうまく働かないことで起こる「起立性低血圧」や、病気や薬が原因の「二次性低血圧(症候性低血圧)」もあります。
不調が続く場合は病院で検査を受け、自分の血圧や病気との関連について確かめておきましょう。
狭心症
狭心症とは、狭心症とは、心筋(心臓の筋肉)に血液を供給する冠動脈が狭くなり、十分な血液が心臓に届かなくなる虚血性心臓疾患の一つです。
狭心症発作は胸の痛みや締め付けられるような圧迫感といった症状が典型的ですが、生あくびが起こることもあります。
生あくびと同時に冷や汗や胸の痛みがある場合、重篤な病気が隠れている可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが重要です。
脳腫瘍
脳腫瘍など脳の病変の影響によって、病的なあくびが起こることも知られています。
脳腫瘍は頭蓋内にできる腫瘍の総称で、100種類以上と多くの種類があり、脳の各部位にさまざまな種類の腫瘍が発生します。
腫瘍ができると脳が圧迫され機能障害が起き、血管が詰まりやすくなり脳梗塞リスクが高まることも特徴です。
腫瘍の位置や大きさ、部位によって現れる症状は変わりますが、頭痛やめまい、吐き気、嘔吐、言語障害、体の左右どちらかにしびれが起こる、言葉がうまく出てこないなどの症状が起こります。
近年、自覚症状はないものの検査で偶然に見つかる「無症候性脳腫瘍」が増えています。これは日本にMRI機器が広く普及し、検査の機会が増えたためです。
早期発見・早期治療が重要であるため、生あくびなど気になる症状がある場合はもちろん、気になる症状がない場合も脳神経外科でMRI検査を含む脳ドックを受けるのがおすすめです。
脳卒中(脳梗塞、脳出血)
脳卒中(脳梗塞、脳出血)でも、生あくびが見られることがあります。
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)する病気です。脳に十分な血液が行き渡らないことで酸素不足が起こり、生あくびを繰り返す症状が起こります。
障害が起こる部位によって多様な症状が起こりますが、中でも典型的な症状といわれるのが以下の5つです。
- 片方の手足や顔半分のしびれ・麻痺
- 言葉が出てこない、うまく言葉を理解できない、ろれつが回らない
- フラフラする、体のバランスが取れない
- 視野が欠ける、物が2つに見える
- 今まで経験したことのないような激しい頭痛
脳卒中は緊急性の高い病気のため、疑わしい症状がある場合は直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
その他
生あくびは、熱中症でも見られることのある症状です。
一般社団法人日本救急医学会の『熱中症診療ガイドライン2015』では熱中症の重症度をステージ1~3の3段階に分類しており、ステージ1の症状として生あくび、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛、こむら返り(筋肉の硬直)などが見られることがあります。
ステージ1は軽度の症状ですが、早めに適切な回復処置を行い悪化を防がなくてはなりません。熱中症が疑われる場合は涼しい場所に移動し、水分やナトリウムを補給して体を休めましょう。
またこのほかにも、睡眠時無呼吸症候群などによる睡眠障害、更年期障害、車酔いなどでも生あくびが起こることがあります。
早急に病院を受診すべき症状
生あくびや頭痛を「しばらく放っておけば治るだろう」と軽く考えて放置するのは避けましょう。
中でも、以下のような症状がある場合は、早急に病院を受診し詳しい検査を受ける必要があります。
- 頻繁に生あくびが出る
- 手足のしびれや麻痺がある
- つまずきやすくなった
- ふらつく
- 胸の痛みや冷や汗がある
- 突然激しい頭痛が起こった
- 吐き気を伴う頭痛がある
上記以外にも、何か気になる症状があれば病院を受診して医師に相談することをおすすめします。
片頭痛が起こる予兆・前兆として見られる症状
日本でも悩んでいる人の多い片頭痛には、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の2タイプがあります。
「前兆のある片頭痛」の場合、頭痛発作は予兆期・前兆期・頭痛期・消退期・回復期に分けられ、このうち「予兆期」「前兆期」には頭痛の前触れとなるさまざまな症状が見られることが特徴です。
予兆と前兆では症状が起こるタイミングや現れる症状が異なります。ここからは、予兆と前兆のそれぞれ代表的な症状を紹介します。
予兆:生あくび・吐き気・肩こり・だるさなど
片頭痛の予兆では、以下のような症状が起こることがあります。
- 生あくび
- 吐き気
- 肩こり、首こり
- だるさ
- 多尿
- むくみ
- 眠気
- 気分の変調
- 集中力低下
- 感覚過敏(光・音)
予兆は通常、頭痛が起こる数時間前〜1、2日前から生じ、長い場合で48時間ほど続きます。
前兆のない人でも、予兆を感じることがあります。
前兆:キラキラ・ギザギザした光(閃輝暗点)
片頭痛の前兆では、予兆とは異なる以下のような症状が見られます。
- 目の前で光がチカチカする
- キラキラ・ギザギザした光(閃輝暗点)
- 視野の一部が欠ける
前兆の代表的なものが閃輝暗点(せんきあんてん)で、このような症状が5分〜60分ほど続いた後で頭痛が起こります。
中には前兆の症状のみが起きて頭痛が起こらないこともあり、このようなケースの片頭痛は「典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの」に分類されています。
ただし、脳梗塞リスクが高い「一過性脳虚血発作」が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
頭痛があるときの対処法
ここでは、頭痛があるときの対処法を紹介します。
鎮痛剤を服用する
頭痛が起こったときの対処法として、鎮痛剤の服用が有効な場合があります。
アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムなどの成分を含む鎮痛剤が一般的です。
ただし、鎮痛剤はあくまで一時的な対処に過ぎません。自己判断で市販の鎮痛剤を飲み過ぎると逆に頭痛を悪化させてしまうリスクがあるため、早めに病院を受診し適切な治療を受けることが大切です。
首周りのストレッチやマッサージをする
首や肩の筋肉の緊張は頭痛を引き起こす原因となるため、首周りのストレッチやマッサージを行い、凝り固まった筋肉をほぐしましょう。
一般社団法人 日本頭痛学会でも、片頭痛の予防や緊張型頭痛の緩和に効果的な方法として『頭痛体操』を紹介しています。
デスクワークや長時間同じ姿勢で作業を続けるときは、こまめに休憩をとってストレッチやマッサージをするのがおすすめです。
ストレスを溜め込まないようにする
片頭痛や緊張型頭痛には、ストレスが影響しているといわれています。
ストレスは頭痛だけでなくさまざまな不調につながるため、なるべくストレスを溜め込まないようにしましょう。
規則正しい生活リズムを保つ、適度な運動を行う、十分な睡眠をとる、趣味の時間を作るといった日々のストレス管理が頭痛への対策になります。
医療機関で専門的な検査を受ける
頭痛は多くの方が経験するよくある症状ですが、脳や脳の血管の異常が原因で起こっている可能性もあります。
頭痛や生あくびが起こる原因を知り、適切に対処するためには、脳神経外科や頭痛専門外来などで、MRI検査やCT検査などの検査を受けることが大切です。
脳ドックで偶然、脳腫瘍や脳動脈瘤が見つかることもあります。早期発見・早期治療のためにも早めに専門的な検査を受けることを検討してみてください。
まとめ
生あくびと頭痛には関連があり、片頭痛の予兆として生あくびが起こることがあります。
また、その他にも生あくびの症状が起こる病気として、低血圧や狭心症、脳腫瘍、脳卒中があります。
生あくびが頻繁に起こる場合やその他にも気になる症状を併発している場合、単なる疲れではなく、なんらかの病気のサインかもしれません。
症状が気になる場合は躊躇わずに病院を受診し、詳しい検査を受けましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」による外来診療を行っています。
患者さん一人ひとりの症状に合った治療をご提案していますので、つらい頭痛にお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。