30歳を過ぎたら受けることが推奨される脳ドックですが、どの程度の費用がかかるのか、どのような病気が見つかるのかなど心配なことが多く躊躇している方もいます。
この記事では、脳ドックの費用相場と主な検査内容、脳ドックでわかる病気や治療方法などを紹介します。
脳ドックにかかる費用が知りたい方、脳ドックについて理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
脳ドックの基本的な検査の内容と費用
脳ドックでは、主に以下の検査が行われます。
- MRI
- MRA
- 血液検査
- DWIBS
ここでは、それぞれの内容や費用相場について紹介します。
脳ドックは自費診療
脳ドックは、病気の早期発見、早期治療を目的に行われる検査で、症状がなくても受けられるのが特徴です。
症状がない状態で受ける脳ドックは自費診療となるため、クリニックごとに費用や内容が異なりますが、相場は2~10万円ほどです。
ただし、脳ドックによって脳梗塞の疑いや脳動脈瘤の疑いなどがある場合は、医師の判断でMRIやMRA、CTなどを追加で実施するケースもあり、この場合は、保険が適用されます。
また、脳ドックはクリニックの方針や患者さんの状態によって見解が異なりますが、1~3年に1回ほどの間隔で受けることが推奨されます。
MRI
MRIは、強力な磁力を用いて脳の断面図を映像化する機械で、X線は使用しないため被ばくの心配がありません。
検査時間は15~30分ほどで、機械の中に入りじっとしている必要があります。
細胞に含まれる水分を共鳴させて、信号をもとに脳の断面画像を得る検査で、CTでは診断できないような細かい異常を見つけられるため、脳の病気を早期発見できるのが特徴です。
大きな音を伴うため検査を苦手だと感じる方もいますが、ヘッドフォンや耳栓をつけることでそれらを軽減できます。
MRA
MRAは、脳の血管のみを立体画像として描き出せる検査です。
造影剤が不要で頭、首の血管を確認でき、奇形や狭くなっている箇所がないか、破裂しそうな血管がないかなどを確認できるのが特徴です。
脳には血管が蜘蛛の巣のように張り巡らされていて、その血管を調べることで、未破裂脳動脈瘤(くも膜下出血の原因)や、無症候性脳主幹動脈閉塞症(脳卒中の原因)などを発見できます。
CTでも同じような検査ができますが、造影剤を使用しないとうまく描出できないため、MRAは患者さんにとって負担の少ない検査といえます。
血液検査
脳ドックでは、血液検査も行い、総コレステロールや中性脂肪、空腹時血糖、HbA1cなどの値を調べます。
これらの値を調べることで、脳卒中のリスク評価に役立つことや、糖尿病や高脂血症、高血圧などの脳卒中のリスクを高める他の病気が潜んでいないか知ることにもつながります。
さらに、今後の生活で気をつけるべき点なども数値によって明らかになるため、リスクが少なくてもどのような生活を送るべきかの指針にもなるのが血液検査の特徴です。
血液検査では、多くの情報が得られるため脳ドックにおいて欠かせない検査の1つです。
DWIBS
DWIBSは、「Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background Suppression」の略で、背景抑制広範囲拡散強調画像を意味します。
MRIを用いて全身のがんを検査できるもので、当院では脳ドックのセット内容に含みます。
頸部から骨盤までの検査でがんのリスクを調べ、PET-CTと比較すると被ばくの心配がないことや、検査時間が少なく注射もしないため、身体への負担が少ないことが挙げられます。
糖尿病の方や、腎機能が低下している方でも検査ができ、1度の検査で全身を調べるのが特徴です。
当院の脳ドックの詳しい情報はコチラ
脳ドックの目的や重要性
脳ドックは自費診療となるため受けるか悩む方もいますが、目的や重要性を知って自分自身に必要な検査かを判断しましょう。
特に、30歳以上で生活習慣病を患っている方や、血縁者で脳疾患の方がいる場合は、脳ドックを受けることが推奨されます。
ここでは、脳ドックの目的や重要性を紹介します。
脳ドックの目的
一般的な項目を調べる人間ドックでは調べられないような、専門ドックの1つである脳ドックは、病気の早期発見、早期治療を目的としています。
脳ドックでは、MRIやMRA、血液検査などを用いて脳血管疾患や脳腫瘍、認知症なども発見できるうえに、それらのリスクも評価できます。
受診頻度は年代やリスクに応じて異なりますが、若い方でも脳卒中のリスクを抱えている方もいることは事実です。
30歳を超えると、脳の疾患に対するリスクが高まるため、年齢に応じて脳ドックを受けることをおすすめします。
病気の早期発見ができる
脳疾患は突然発症することが多いうえに、発症によって生命に危機が及んだり、言語障害や麻痺などの後遺症のリスクが高くなったりします。
他の病気と違って発症前の自覚症状も乏しいため、受診が遅れやすく、治療を始めるのも遅くなりがちです。
そのため、発症リスクが高い方や年齢に応じて、脳ドックを受けることで、すみやかに治療を始められるだけではなく、リスクに対して予防策を講じることもできます。
厚生労働省が発表している「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」によると、脳血管疾患は、日本人の死因の4位です。
病気の早期発見のためにも、リスクを知るためにも、脳ドックを受けることをおすすめします。
脳ドックでわかる病気と治療方法
脳ドックでは、さまざまな病気やそのリスクが発見されるケースがあります。
ここでは、脳ドックでわかる病気と治療方法について紹介します。
脳出血・脳梗塞
脳出血と脳梗塞は、脳卒中の一種で、脳ドックではMRIによってこれらを検出できます。
脳出血は、脳内の血管が破れて出血する病気で、高血圧による血管の損傷が主な原因となることが多いですが、それ以外にもさまざまな原因が考えられるため、年齢や脳の奇形などを観察する必要があります。
脳ドックでは、急性期の出血だけではなく、過去の出血の痕跡も確認できます。
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで起こる疾患で、脳ドックでは無症候性脳梗塞と呼ばれる症状のない小さな脳梗塞も発見できます。
これらは、将来の脳卒中のリスクや認知症のリスクを高めるため、早期発見が非常に重要です。
異常が見つかった場合は、生活習慣の改善や症状に合わせた治療を行い、MRAによって血管の状態を評価して動脈硬化や狭窄の程度を確認します。
また、ろれつが回らない、言葉が出ない、半身麻痺などの症状がすでに現れている場合は、脳梗塞の発症からあまり時間が経過していないなら血栓を溶かす薬の投与や、カテーテル脳血管内治療が行われます。
脳出血では、開頭して脳内血種を取り除いたり、最近では、内視鏡を用いて侵襲性を軽減した手術などが検討されます。
脳動脈瘤
脳動脈瘤とは、脳の動脈にできる瘤状のふくらみのことで、脳動脈瘤があるだけでは自覚症状がないことが多いため、脳ドックによる検出が効果的です。
一般的には3mm以上の動脈瘤であれば検出可能とされていますが、状態によっては小さなものも発見できる可能性があります。
大きな動脈瘤や不整形の動脈瘤は破裂のリスクが高いとされ、開頭クリッピング術やコイル寒栓術などの治療が検討されることもあります。
小さい動脈瘤の場合は、経過観察を行うことも多いですが、医師の指示に従った生活や通院が必要です。
早期発見によってくも膜下出血のリスクを軽減できる可能性があるため、脳ドックによる脳動脈瘤の発見は非常に重要な役割を果たしています。
アルツハイマー型認知症
脳ドックを受けることで、アルツハイマー型認知症の早期発見と予防が可能です。
MRIによって海馬や側頭葉内側部の萎縮パターンを評価することで、アルツハイマー型認知症の初期段階で見られる特徴的な状態を見つけられます。
また、MRIでは脳深部の大脳白質に血流が不足して起こる大脳白質病変の評価もでき、血管性認知症のリスク因子や、アルツハイマー型認知症の進行の可能性を確認できます。
アルツハイマー型認知症は、治療が難しいとされますが、進行を遅らせることは可能です。
医師による経過観察、生活習慣の改善、治療を早期に行うことが重要です。
脳腫瘍
脳ドックによって、MRI検査を受けることで脳腫瘍を早期発見できます。
T1強調画像、T2強調画像、FLAIR画像、造影T1強調画像などの複数の撮像法によって、腫瘍があることだけではなく性状や周辺組織への影響も評価します。
脳ドックで発見される脳腫瘍の多くは、無症状の良性腫瘍で、髄膜腫や下垂体腺腫、聴神経鞘腫などがあります。これらは一般的に進行が遅く経過観察するケースも多いですが、当院では、小さくても、リスクの高い部位にある腫瘍は、手術を推奨しております。
ただし、悪性脳腫瘍が発見される可能性はゼロではありません。悪性脳腫瘍が発見された場合は、必要に応じて追加の検査を行い、早期に手術や放射線治療、化学療法などを検討します。
水頭症
水頭症は、脳脊髄液の循環障害によって脳室が拡大する疾患で、MRIによって早期発見が可能です。
MRIでは、T1強調画像、T2強調画像を用いて脳室の大きさや形状を確認します。
水頭症では、特徴的な脳室拡大パターンや脳溝の狭小化が見られるため、脳ドックによって初期段階の水頭症を発見できる可能性が高まります。
この疾患は、歩行障害、認知機能の低下、尿失禁などが特徴で、生活に大きく支障をきたしますが、脳ドックで症状が深刻化する前に脳室拡大を発見できれば、早期治療が叶うのです。
水頭症の原因は、髄液の流れが阻害される場合、髄液が過剰に産生される場合、髄液の吸収障害が生じた場合などそれぞれです。
原因によって追加の検査を行う場合もあり、症状がなければ経過観察となることもありますが、症状に悩まされている場合や進行が認められる場合は手術や治療が行われます。
脳血管障害による認知症のリスク
脳血管障害による認知症は、血管性認知症と呼ばれます。脳ドックでは、MRIのT2強調画像やFLAIR画像を用いて大脳白質病変の程度を評価します。
大脳白質病変は、広がりが大きいほど血管性認知症のリスクが高くなるのが一般的です。
また、ラクナ梗塞という小さな脳梗塞の数や分布も重要な指標です。
脳ドックは、無症候性脳梗塞や微小出血の検出もできるため、将来の認知症リスクを判断します。
MRAによって主要な脳動脈の狭さや閉塞を評価することもでき、それによって脳血流低下が起こり認知機能低下のリスクがどの程度あるか判断できます。
脳ドックで脳血管障害による認知症のリスクが高いと判断されたら、禁煙や適度な運動、食事療法といった生活習慣の改善や、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患の治療が重要です。
脳血管障害による認知症は、脳ドックで早めにリスクを感知できれば、発症や進行を遅らせる可能性もあります。
まとめ
脳ドックの費用は自費診療となるため、医療機関によって異なりますが大体2〜10万円ほどです。
検査によってさまざまな病気を見つけられるうえに、病気になるリスクも評価できます。
親族に脳の病気を発症した方がいる、生活習慣病を患っている、喫煙をしているなど、リスクが高い方は特に早い段階で脳ドックを受けることをおすすめします。
神奈川県相模原市の脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、早期発見、早期治療を第一に考えた脳ドックを行っています。
脳の検査以外にも、脳血管、頸部の血管、脳血流の検査、血液検査などさまざまな検査によって生活習慣病も検知できます。
DWIBSによるがん検診も含んでいるため、脳ドックを検討している方は脳神経外科 福島孝徳記念クリニックにご相談ください。