脳ドックの異常発見率は?検査方法や検査結果について紹介

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脳ドックは、脳梗塞や脳腫瘍といった脳疾患の早期発見や予防を目的とした健康診断で、MRIやMRAなどの検査で脳の状態を調べます。

30歳を過ぎると脳疾患のリスクが高まるとされるため、受けた方がよい検査ですが、脳ドックでの異常発見率はどの程度なのでしょうか。

この記事では、脳ドックでの異常発見率、どのような検査を行うか、異常が見つかったときの流れ、心構えなどを紹介します。

脳ドックを受けたいと考えている方や、脳ドックの異常発見率を知りたい方は、ぜひご覧ください。

脳ドックでの異常発見率

脳ドック

脳ドックでは、さまざまな脳疾患を発見できます。

ここでは、脳ドックで見つかる疾患についての異常発見率を紹介します。

動脈硬化

動脈硬化は、脳ドックで高頻度に発見される疾患の1つで、発見率は約2%です。

ただし、このデータには軽度の動脈硬化が含まれていない可能性があり、実際の発見率はさらに高いと考えられます。

動脈硬化は、年齢とともに頻度が増加するのが特徴で、60歳以上になると半数以上の患者さんに所見が認められた報告もあります。

単独で症状が現れるというよりは、動脈硬化が進行すると脳梗塞や心筋梗塞などの疾患のリスクが危惧される病気です。

特に、生活習慣病を患っている方や、喫煙者などの危険因子を持つ方は、定期的に脳ドックを受けることが推奨されます。

脳ドックによって動脈硬化が発見された場合、程度や部位に応じて生活習慣を改善したり、薬物療法が提案されたりします。

早期発見により脳梗塞や心筋梗塞などの疾患を予防することにつながるのが特徴です。

脳梗塞

脳ドックで見つかる脳梗塞は、主に症状を伴わない無症候性脳梗塞です。MRI検査で脳の一部に梗塞巣が見つかることがあり、その発見率は約3%です。

ただし、この数値は年齢や対象の集団によって大きく変動する可能性があります。年齢が上がるにつれて無症候性脳梗塞の頻度は増加し、60歳以上になると40~50%ほどの方に認められる報告もあります。

将来脳梗塞になる可能性がある無症候性脳梗塞は、認知機能低下や歩行障害などのリスクも高まるのが特徴です。

脳ドックで無症候性脳梗塞が発見された場合は、原因や危険因子の評価が行われます。

生活習慣病や心房細動などの基礎疾患の管理が重要で、必要に応じて抗血小板薬を投与したり、生活習慣の改善をはかったりします。

脳動脈瘤

脳動脈瘤は、脳の血管の一部が腫瘍状態になり膨張し、破裂するとくも膜下出血を起こすもので、破裂する前の状態は未破裂脳動脈瘤です。

発見率は約5%で、成人の2~6%ほどの方に未破裂脳動脈腫瘍があると考えられています。

脳ドックでの脳動脈瘤の発見は、MRAによって行われます。MRAは患者さんへの負担が少ないスクリーニング検査として適していますが、小さな動脈腫瘍を見逃さずに注意深く検査する必要があります。

発見された場合は大きさや形状、部位などによってリスク評価が行われ、リスクが高いとされる場合は予防的治療が検討されますが、小さい動脈腫瘍の場合は経過観察が選択されることもあります。

脳腫瘍

脳腫瘍は早期発見が重要な疾患の1つで、良性と悪性があり脳ドックで発見される腫瘍の多くは良性です。

発見率は約0.1~0.2%で、10万人あたり130.8人程度に脳腫瘍が存在すると推定されます。

脳腫瘍にはいくつかの種類があり、髄膜腫、下垂体線種、神経鞘腫などが多いです。

MRI検査によって脳腫瘍の大きさ、位置などさまざまなことがわかり、良性か悪性かの推定にも役立ちますが、必要に応じて造影MRIや脳血流検査などの追加検査が行われる場合もあります。

脳腫瘍が発見された場合は、種類や大きさ、位置などに応じて治療方針が決定されます。

かなり小さな良性腫瘍は経過観察を行う場合もありますが、ある程度の大きさの腫瘍や症状が現れている場合、悪性が疑われる場合などは手術や放射線治療などが検討されます。

脳ドックで行う検査

脳

脳ドックでは主に、MRI、MRA、血液検査が行われます。

ここでは、それぞれを詳しく解説します。

MRI

MRI検査は磁気共鳴画像法とも呼ばれ、強力な磁場と電波によって脳の詳細な断層画像を撮影します。

大脳、小脳、脳幹、脊髄などの状態を詳しく観察でき、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血などの大きな病気を見つけることができます。

MRI検査では、T1強調画像、T2強調画像、FLAIR画像(液体減衰反転回復)など複数の撮影方法を組み合わせて使用するのが一般的です。

特に、FLAIR画像は脳脊髄液の信号を抑制するため、脳の病変を明確に検出でき、陳旧性脳梗塞や微小脳梗塞の検出にも有用です。

X線を使用しないため放射線被ばくの心配がなく、安全性が高いため繰り返し検査を行えることで、経過観察にも適しています。

脳ドックでMRI検査を行うことで、脳の異常を初期段階で発見し、適切な予防や治療につなげることができます。

MRA

MRA検査は磁気共鳴血管撮影法とも呼ばれ、MRIと同じ原理で脳血管の立体的な画像を確認する検査です。

造影剤を使用せずに、血管の状態をより詳しく知ることができるのが特徴です。

血液の流れを信号として伝えることで血管を確認し、主に頭蓋内動脈や頭蓋外動脈の状態を把握することができます。

特に、くも膜下出血の原因になる脳動脈腫瘍の早期発見に有効で、3mm以上の動脈腫瘍であれば高確率で検出可能です。

血管の狭さや閉塞の評価によって、将来的な脳梗塞リスクの予測も可能です。

MRIと同様、X線を使用しないため繰り返し検査ができ、経過観察をする際にも用いられます。

ただし、3mm未満の動脈腫瘍や、血流が遅い部分の血管は描出が難しいケースもあり、形状によっては正確な判断が難しい場合もあります。

血液検査

脳ドックで行われる血液検査は、脳卒中のリスクを高める疾患や状態をチェックするために行われるのが一般的です。

以下のような項目を確認します。

  • 脂質検査……総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
  • 血糖検査……空腹時血糖とHbA1c
  • 肝臓機能検査……AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP
  • 腎機能検査……血清クレアチニン、尿素窒素、eGFR

これらの項目は、施設によって異なる場合もありますが、脳卒中のリスクを総合的に評価するために行われます。

例えば、高コレステロール血症、高血糖、高血圧などの複数のリスク因子が重なると、脳卒中のリスクは相乗的に高まります。

血液検査の結果次第で、生活習慣の改善や薬物療法を行い、リスクを軽減させることが重要です。

脳ドックで異常がみつかったら

脳

脳ドックで異常が見つかった場合、病変の程度によって以下のような選択をします。

ここでは、脳ドックで異常が見つかった際どうするかについて紹介します。

経過観察

脳ドックで、軽度の異常や当面の治療を必要としない病変があった場合、経過観察が選択される場合があります。

経過観察では、定期的に病変の進行や変化などを確認し、適切なタイミングで介入することが目的です。

発見された異常の種類により異なりますが、一般的には6ヶ月~1年ごとのMRIやMRAを受けるようにしましょう。

ただし、この頻度は患者さんの年齢や全身状態、生活環境などを総合的に考慮して決められることになります。

例えば、5mm未満の未破裂脳動脈腫瘍があった場合は、年に1回のMRA検査で大きさや形の変化を確認し、大きくなっていたり形状が変化したりしていた場合は、治療を開始します。

無症候性脳梗塞の場合も、定期的にMRIを受けて新たな梗塞巣が出現していないか、既存の梗塞巣の拡大はないかなどを確認します。

経過観察中は、医師の指示や生活習慣の改善、基礎疾患の管理を徹底することが重要です。

また、経過観察中に麻痺や言語障害などの症状が現れた場合は、すぐに脳神経外科を受診してください。

精密検査

脳ドックで異常が発見された場合は、病変の性質をより詳細に評価するために、精密検査を行うことがあります。

主に以下のようなものです。

  • 造影MRI検査……造影剤を使用することで病変の血流状態や性質をより詳しく観察できる
  • CT検査……血管の詳細な構造を観察できる
  • 脳血管造影……血管性の病変の精密な評価に用いられる
  • PET検査……脳腫瘍の悪性度や認知症の鑑別診断などに用いられる
  • SPECT検査……脳梗塞や認知症の診断に役立つ
  • 脳波検査……てんかんなどの異常の評価に用いられる
  • 神経心理検査……認知機能の詳細な評価に用いられる

これらは、脳神経外科で検査結果に基づいて医師が詳細な診断を行い、治療の方向性や方針を決定します。

検査をする過程で、患者さんには検査の目的や検査によるリスクをしっかり説明し、同意を得たうえで実施されます。

精密検査の結果で重大な異常が発見された場合は治療に移行しますが、軽度の異常の場合は経過観察です。

治療や手術方針の決定

脳ドックや精密検査の結果を踏まえ、治療や手術が必要となった場合、それらを決定して異常の種類や程度、リスクなどを総合的に判断します。

診断によって重症度の評価が行われ、薬物療法、手術療法、放射線療法など利用可能な治療の選択肢を医師が検討します。

さらに、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して検討された治療内容について、患者さん自身や必要であればご家族への説明が行われるのが一般的です。

治療方針や手術方針を決定するには、患者さんの十分な理解と同意が必要となるため、医師から治療の目的や方法、予想されるリスク、その他の治療の選択肢などの説明をしっかり受ける必要があります。

脳ドックを受ける際の心構え

検査

脳ドックを受ける際は、以下のような心構えが必要です。

検査前の注意事項を守る

脳ドックを受ける際、いくつか検査前の注意事項があるため、厳守するようにしましょう。

  • 食事制限……検査前の8~12時間は絶食する
  • 薬の服用……血液をサラサラにする薬は調整が必要
  • 睡眠……検査前日は十分な睡眠をとる
  • アルコール……検査前日、当日のアルコールはNG
  • カフェイン……検査前日、当日のコーヒーや緑茶などのカフェインはNG
  • 運動……検査前日、当日の激しい運動は避ける
  • 体調管理……風邪、発熱などがある場合は申告する

これらの注意事項を守り、より正確な検査結果を得られるよう心がけましょう。

特に、持病がある方や薬を服用している方は、必ず事前に医師に薬を服用しても問題ないか確認してください。

装飾品やメイク・ネイルはNG

脳ドックを受ける際、検査の精度に関わるため以下の装飾品やメイク、ネイルなどはNGとなります。

  • 金属製の装飾品……MRIで発熱したり、アーチファクト(偽像)を引き起こしたりする可能性がある
  • メイク……金属が含まれている可能性があるためNG
  • ネイル……金属が含まれている可能性や、パルスオキシメーターの正確な測定を邪魔する可能性があるためNG
  • コンタクトレンズ……金属が含まれる可能性、目の乾燥を防ぐために外すことが推奨される
  • 入れ歯・義歯……取り外し可能であれば取り外す
  • 下着……金属を含む下着は避けて検査着に着替える

このように、MRIを受ける際はさまざまなNG行為があります。

金属を含むものを身につけないようにすることや、ネイルやカラーコンタクトなども外す必要があります。

病変が見つかったらすみやかに適切な対応を

脳ドックで病変が見つかった場合、すみやかに適切な対応をとることが重要です。

病変が見つかったからといって、深刻な病気であるとは限りません。小さな異常である可能性もあるため、医師の説明をよく聞き、パニックを起こさないように心がけましょう。

また、追加で検査が必要になる場合は、それらの検査がどのような検査なのか、リスクはあるのかなどの説明を受けて精密検査に備えてください。

さらに、多くの病変で生活習慣の改善が重要となります。

治療計画を立てるうえで、今後の生活習慣を整えることを前提にするとよいでしょう。

治療を行ったあとも、定期的に経過観察が必要になるケースがあるため、医師の指示に従って定期的に検査や診察を受けてください。

まとめ

脳ドックの異常発見率は、その病気によって異なります。

また、病変が見つかったとしてもすぐに治療が必要なものもあれば、経過観察によって様子を見るものもあります。

それらを考慮し、医師の指示を守りながら適切な検査を受けるよう心がけましょう。

神奈川県相模原市の脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、症状がなくても脳ドックを受けていただけます。

脳ドックは30歳以上で脳の状態が気になる方に受けていただきたい検査です。

生活習慣病を患っている方や、ご家族に脳の病気の方がいるなど、心配なことがあればぜひ脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでの脳ドックをおすすめします。

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