医療現場でよく使われるレントゲンとMRIは、どちらも体の内部を画像化して確認するための検査ですが、仕組みや得意分野には大きな違いがあります。
レントゲンは放射線を使って骨や肺の状態を素早く調べるのに適しており、短時間・低コストで受けられるのが特徴です。
一方、MRIは磁場を利用して筋肉や神経、内臓などのやわらかい組織まで詳しく映し出せます。
この記事では、レントゲンとMRIの違いについて詳しく解説します。
MRIで発見できる主な疾患やレントゲンとMRIの使い分け方などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
MRI・CT・レントゲンのそれぞれの特徴

体の内部を調べる検査には、MRI・CT・レントゲンなどがあります。
いずれも画像を使って体の状態を調べる検査ですが、仕組みや得意とする分野が異なります。
MRIは筋肉や神経などのやわらかい組織を詳細に映し出すことができ、CTは体の断面を細かく見ることができ、レントゲンは骨などの硬い部分の確認に向いているのが特徴です。
ここではMRI・CT・レントゲンのそれぞれの特徴について解説します。
MRIとは
MRIは、強力な磁気を使って体の内部を撮影する検査です。
レントゲンやCTのように放射線を使わないため、被ばくの心配がないのが大きな特徴です。
MRIは脳や脊髄、関節、筋肉、内臓などの『軟部組織』を詳しく観察するのに適しています。
例えば、脳梗塞の初期変化や靭帯損傷、椎間板ヘルニアなどを確認する際に利用されます。
また、MRIでは体を輪切りにしたような断面画像を多方向から撮影でき、病変の位置や大きさ、周囲の組織との関係を立体的に把握できる点も特徴です。
金属が体内にある人は磁場の影響を受けるため、事前に医師に相談する必要があります。
CTとは
CTは、X線を照射して体の断面画像を撮影する検査です。
レントゲンと同じ放射線を使いますが、CTはより詳細な情報を得られます。
短時間で広範囲を撮影できるため、事故や病気などで早急に診断が必要なときにも活用されます。
臓器や骨の状態、出血や腫瘍の有無などを立体的に確認することが可能です。
ただしレントゲンよりも放射線の量が多いため、頻繁に検査を受ける場合には注意が必要です。
レントゲンとは
レントゲンは、X線を体に当てて体内の静止画像を撮影する検査です。
主に骨や肺などの硬い組織を映し出すのが得意で、骨折や関節の変形、肺炎などの確認に適しています。
撮影時間が短く、結果もすぐにわかるため、医療現場で頻繁に行われる検査です。
被ばく量は少なく、経過観察のために繰り返し撮影することも可能です。
ただし、レントゲンは一方向からの画像しか得られないため、内部の詳細を確認するには限界があります。
そのため、異常が疑われる場合にはCTやMRIといった精密検査が追加されることがあります。
MRIとレントゲンの主な違い

MRIとレントゲンの主な違いとして、以下の3つが挙げられます。
- 放射線被ばくリスク
- 画像解像度
- 適応疾患の範囲
ここでは上記3つについてそれぞれ解説します。
放射線被ばくリスク
MRIとレントゲンの大きな違いの一つは、放射線被ばくリスクです。
レントゲン検査では、X線という放射線を体に当てて内部を撮影します。
1回の検査での被ばく量はごくわずかですが、繰り返し行うことでわずかながら体への影響が蓄積する恐れがあります。
そのため、妊娠中の方や放射線に敏感な方には注意が必要です。
一方のMRIは放射線を一切使用せず、強力な磁石の力で体の内部を画像化します。
つまり放射線被ばくの心配がありません。
レントゲンの被ばくが気になる患者さんにも、安心して実施できるのがMRIのメリットです。
ただし、体内に金属やペースメーカーなどがある場合は磁場の影響を受けるため、検査を受ける際は申告する必要があります。
画像解像度
レントゲンは骨や石灰化した部分など、硬い組織を鮮明に映し出すのが得意です。
胸部レントゲンや骨折の確認などで広く使われており、短時間で撮影できる点もメリットに挙げられます。
しかし、筋肉・神経・内臓などのやわらかい組織ははっきり映らないため、細かな病変の確認には不向きです。
一方でMRIは磁気を利用して断面画像を撮影するため、体内の構造を非常に細かく描き出せます。
特に脳や脊髄、関節、筋肉などの軟部組織を高い解像度で観察できるため、神経の圧迫や炎症、出血などの異常も確認可能です。
撮影に時間はかかりますが、より精密な情報が得られるのがMRIの強みです。
診断精度が求められる場面では、レントゲンよりもMRIが選ばれることが多くなります。
適応疾患の範囲
レントゲンは主に骨や肺、関節の状態を確認するために使われます。
骨折、脱臼、関節の変形、肺炎などの診断に有効で、短時間で結果が出るため救急現場でもよく利用されます。
ただし、筋肉や神経の損傷など、内部の細かい異常までは把握できません。
それに対してMRIは、脳、脊髄、関節、筋肉、臓器、血管など幅広い部位の検査に対応できます。
脳梗塞や椎間板ヘルニア、腫瘍、靭帯損傷などの診断に特に有用で、出血や炎症などの微細な変化もとらえられます。
レントゲンでは見つからなかった異常を発見できる場合も多く、より詳細な診断を必要とする際に選ばれる検査です。
このようにレントゲンとMRIは対象とする疾患の範囲が異なるため、医師が症状に応じて適切な検査を選んでいます。
MRIで発見できる主な疾患

MRI検査は、体の内部を詳しく観察できる検査で、幅広い部位の病気を発見できます。
特に脳や脊椎、四肢の関節といった動きの少ない部位の撮影を得意としているのが特徴です。
ここではMRIで発見できる主な疾患について解説します。
脳・頭部の疾患
MRIは脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳血管疾患の診断に広く利用されている検査で、脳や頭部の異常を調べるのに優れています。
CT検査でも脳の状態を確認できますが、MRIはより詳細に脳の内部構造を映し出せます。
そのため、小さな病変や早期の異常を発見する際に効果的です。
特に脳の血流状態や神経の損傷を詳しく把握できるため、脳卒中の早期発見や認知症の診断にも利用されています。
頭痛やめまいなどの原因を調べる際にも、MRIは重要な検査の一つです。
脊椎・脊髄の疾患
脊椎や脊髄の異常を確認する際にも、MRIは欠かせません。
代表的な疾患には椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、頸椎症、脊髄腫瘍などがあります。
レントゲンでは骨の形はわかっても、神経や椎間板の状態までは確認できませんが、MRIなら軟部組織も鮮明に映し出せます。
特に腰や首の痛み、手足のしびれ、力が入りにくいなどの症状がある場合、MRIで神経の圧迫状態を確認することで、手術が必要かどうかを判断することが可能です。
脊髄の中にある小さな腫瘍や炎症も見逃さずに発見できるため、整形外科や神経内科で広く活用されています。
四肢の疾患
MRIは肩・膝・肘・股関節など、四肢の関節や筋肉の検査にも有効です。
特に、スポーツや事故によるケガの診断で多く使われています。
代表的な疾患には前十字靭帯断裂や半月板損傷、腱板断裂、大腿骨頭壊死、骨挫傷などがあります。
レントゲンでは骨の状態しか確認できませんが、MRIなら靭帯や腱、筋肉、軟骨などの損傷も詳細に把握可能です。
痛みや腫れの原因がどこにあるのかを突き止めるのに役立ち、手術やリハビリの方針を決めるうえで欠かせない検査です。
さらに、骨肉腫や転移性腫瘍といった悪性疾患の発見にも役立つことがあります。
※当院では検査を実施しておりません。
肝臓・胆嚢・胆道・膵臓の疾患
腹部のMRIでは、肝臓・胆嚢・胆道・膵臓といった臓器を詳しく調べられます。
これらの部位はがんが発生しやすい場所であり、MRIによって肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がんなどの早期発見が可能です。
MRIでは膵管や胆管の形状、胆石や腫瘍の有無を詳しく確認でき、がんや炎症、閉塞などの診断に役立ちます。
※当院では検査を実施しておりません。
子宮・卵巣の疾患
MRIは婦人科系の疾患を調べるうえでも大切な検査です。
主に子宮がんや卵巣がんなどの診断に使われます。
他の検査では判断が難しい腫瘍の位置や大きさ、周囲への広がりなどを詳しく確認することが可能です。
また、子宮内膜症や骨盤内の炎症性疾患など、慢性的な痛みや不妊の原因となる病変を発見する際にも有効です。
※当院では検査を実施しておりません。
前立腺の疾患
男性特有の臓器である前立腺の検査にもMRIは用いられます。
前立腺がんの早期発見や、炎症、肥大の状態を詳しく評価することが可能です。
近年ではPSA検査(血液検査)とMRIを組み合わせることで、より正確な前立腺がんの診断が可能になっています。
※当院では検査を実施しておりません。
MRI・CT・レントゲンはどのように使い分ける?

医療現場では、症状や目的に応じてMRI・CT・レントゲンを使い分けています。
どの検査にも得意・不得意があるため、「どの検査が一番優れている」というよりも、「何を調べたいのか」「どんな症状があるのか」で適切な方法が変わります。
ここではMRI・CT・レントゲンの使い分け方について解説しましょう。
MRIが適しているケース
MRIは、筋肉・神経・血管・靭帯・脳などの軟部組織を詳しく調べたいときに適しています。
放射線を使わないため被ばくの心配がなく、脳や脊髄、関節、臓器などを安全に観察できます。
代表的な例としては、脳梗塞や脳腫瘍、椎間板ヘルニア、靭帯損傷、子宮や卵巣、前立腺などのがんの診断が挙げられるでしょう。
また、MRIは体を輪切りにしたような画像を多方向から撮影できるため、病変の位置関係を立体的に把握できる点も大きな特徴です。
ただし体内に金属や電子機器がある場合は制限があるため、事前に医師への申告が必要です。
CTが適しているケース
CTはレントゲンと同じくX線を使用しますが、体の周囲を360度から撮影してコンピューターで断層画像を作る検査です。
骨の細かい形や臓器の内部構造を立体的に確認できるため、交通事故などの外傷、脳出血、肺炎、がんの転移の有無などを調べるときに使われます。
特に「すぐに結果が必要な場合」に強く、検査時間が短いことが特徴です。
救急現場では、外傷や脳出血が疑われる際に選ばれることが多いです。
また、骨盤や背骨などの複雑な骨折を詳しく見るとき、手術前に骨の形を立体的に把握する目的でも用いられます。
さらに造影剤を使うことで血流の流れや腫瘍の広がりも確認できるため、がんの診断や内臓疾患の評価にも有効です。
ただし放射線を使用するため、頻繁に行う検査には注意が必要です。
レントゲンが適しているケース
レントゲンは、手軽に行える画像検査です。
短時間で撮影が完了し、被ばく量も少ないため、外来や健診で広く使われています。
主に骨や関節の異常、肺や心臓の状態を確認するのに適しており、骨折、脱臼、関節変形、肺炎などの診断に役立ちます。
特に整形外科では、転倒や事故によるケガがあった場合、まずレントゲンで骨の状態を確認することが多いです。
ただし、レントゲンでは筋肉や神経、内臓などのやわらかい部分までは映りません。
そのため、異常の原因が骨以外にあると考えられる場合は、MRIやCTを追加して詳しく調べることになります。
MRIとレントゲンの違いに関するよくある質問

MRIとレントゲンの違いに関するよくある質問をまとめました。
- MRIとレントゲンの検査時間は?
- MRIとレントゲンの費用は?
ここでは上記2つの質問についてそれぞれ解説します。
MRIとレントゲンの検査時間は?
レントゲンはごく短時間で終わります。
撮影自体は1枚あたり数秒で完了し、準備や体位の調整を含めても5〜10分ほどで終わることが多いです。
検査当日に結果がわかる場合も多く、外来で気軽に受けられるのが特徴です。
一方、MRIは体の内部を細かく撮影するため、撮影に時間がかかります。
部位によって異なりますが、一般的に20〜40分程度が目安です。
MRIは撮影時間が少し長くなりますが、その分レントゲンで見えない神経や筋肉、血管なども詳しく確認できます。
MRIとレントゲンの費用は?
レントゲン検査は費用が比較的安く、3割負担の方で1,000〜3,000円程度が目安です。
検査時間が短く、どの医療機関でも受けられるため、負担の少ない画像検査といえます。
一方、MRIはより精密な画像を撮るため、費用はやや高くなります。
検査内容や部位によって異なりますが、保険適用の場合で自己負担額は5,000〜15,000円程度です。
造影剤を使う場合はさらに高くなることがあります。
※当院ではレントゲン検査を実施しておりません。
まとめ
レントゲンとMRIはどちらも重要な検査ですが、目的によって使い分けが必要です。
骨折や肺炎の確認など、短時間で全体を把握したいときはレントゲンが選択されることが多いです。
一方で、神経や筋肉、靭帯、臓器などの異常を詳しく調べたいときはMRIが適しています。
どちらの検査を受けるべきかは症状によって異なるため、自己判断せず医師に相談することが大切です。
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