頭蓋底腫瘍
頭蓋底腫瘍とは、頭蓋底という部位に発生する腫瘍の総称です。斜台という頭蓋の真ん中に存在する骨の近傍にある腫瘍であることが多いです。腫瘍の種類としては、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、軟骨肉腫、脊索腫、海綿状血管腫等、様々なものが存在します。頭蓋骨の深部の骨を削り、腫瘍を同定する必要があるため、高度な解剖の知識を必要とします。ある程度の解剖のトレーニングを受けた脳神経外科医でないと、精度の高い手術は不可能です。また、脳の深部の腫瘍であるため、神経と血管の間の狭い隙間から腫瘍を摘出することが多く、非常に高い技術を必要とします。その際にも鍵穴手術に使用する様々な技術が活かされます。日々、三叉神経痛や顔面痙攣、その他の腫瘍に対して鍵穴で手術を行うチームだからこそ、この高難度の頭蓋底腫瘍に対して精度の高い治療を行えると考えております。
MRI検査です。黄色の矢印で示しているのが、腫瘍本体です。錐体骨とテントという膜に大部分が付着しており、一部斜台部にも付着している腫瘍です。脳幹、小脳を圧迫しています。
実際の術中画像です。
錐体骨という骨を除去して腫瘍の本体に直接アプローチする術式を選択しました(黄色丸の骨をすべて除去)。この方法により小脳への影響を最小限に抑え腫瘍摘出を行うことができます。S状静脈洞を切断し、(水色丸の部位を切断する)硬膜を十分に大きく開放することが可能です。
実際の術中画像です。
腫瘍が大きいので、切断しながら摘出しています(黄色丸)。腫瘍に流入している血管を処置した後なので、腫瘍からの出血はほぼ認めません。
実際の術中画像です。
腫瘍の大半は摘出されております(水色丸の部位は、腫瘍がすべて摘出されています)。黄色丸の部位は顔面神経が走行しており、腫瘍と神経を丁寧に見分けながら操作を進めていきます。
実際の術中画像です。
腫瘍が摘出され、顔面神経(黄色矢印)も温存されています。脳幹表面の微小な血管もすべて温存されているのが確認できます。
実際の傷の画像です。
このような大きな腫瘍の手術であっても、ほぼ無剃毛で手術しているため、傷も全然目立ちません。
術後のMRI検査です。
腫瘍が全摘出されています。術後、特に神経症状の増悪はなく、退院となりました。手術における小脳の影響が少ないアプローチを選択したので、術後1週間で退院となりました。