「目の奥が痛い」「目の中の辺りが痛い」など、目の痛みを訴える患者さんは少なくありません。
目の奥に痛みが生じる原因は片頭痛や群発頭痛のような頭痛のほか、急性緑内障発作や眼窩蜂窩織炎といった目の病気、副鼻腔炎などさまざまです。
また、怖い病気では、脳血管障害によって目の奥に痛みが起こっている可能性も考えられます。
この記事では、目の奥が痛む主な原因と症状、目の奥の痛みの対処法などについて解説します。
どの診療科を受診すべきかについても解説しますので、ぜひ記事を参考にして、つらい痛みから解放されましょう。
目の奥が痛む主な原因と症状
目の奥の痛みには、さまざまな原因が考えられます。緊急性の高い症状もあるため、気になる症状があれば放置せず早めに対処することが大切です。
- 眼精疲労
- 片頭痛
- 群発頭痛
- 急性緑内障発作
- 眼窩蜂窩織炎
- 感染性眼内炎
- 視神経炎
- 副鼻腔炎
- 脳血管障害
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
眼精疲労
眼精疲労とは、目の酷使や合わない眼鏡の使用、ストレスなどの原因によって、目や全身にさまざまな症状が起こり、休息や睡眠をしっかりとっても十分に回復しない状態を指します。
目の痛み、目のかすみ、まぶしさ、目の充血など目に起こる症状や、頭痛や吐き気、肩こりといった全身症状などが特徴です。
近年はスマホやパソコンなどの画面を長時間見続けることが増えたことによる眼精疲労が増加しているといいます。
また、緑内障や白内障、ドライアイも眼精疲労が起こる原因の一つです。
片頭痛
片頭痛は、脈打つようなズキズキ、ズキンズキンする頭痛を発作的に繰り返す慢性頭痛の一種です。
片頭痛という名前の通り、片側に起こることが多いですが、両側に痛みが生じることもあります。こめかみなど目よりも上に痛みが起こることが多いですが、目の奥の痛みを感じる方もいます。
脳や体の病気が原因となって起こるものではないため命にかかわることはありません。しかし痛みが強く、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
典型的な症状は以下の通りです。
- ズキズキする頭痛
- 吐き気や嘔吐
- 光や音に対する過敏性
- 閃輝暗点
片頭痛の前兆として、閃輝暗点(視野の一部にギザギザした光る線が現れる現象)と呼ばれる視覚症状が現れることもあります。
治療は急性期の痛みを和らげる薬物療法と、発作頻度を減らす予防療法が有効です。
片頭痛は悩んでいる方は多い一方で受診率が低く放置されがちですが、病院を受診すれば有効な治療ができます。
頭痛の裏に命にかかわる大きな病気が潜んでいる可能性もあるため、つらい頭痛がある場合は、脳神経外科や頭痛専門医の診察を受けましょう。
群発頭痛
群発頭痛は、片側の目の奥や側頭部に激しい痛みが起こる頭痛です。まれな病気で、女性よりも男性に多く見られます。
「目の奥をえぐられるような痛み」と表現されるほど強烈な痛みが特徴で、頭痛の発作は通常15分〜180分ほど続き、1日に複数回起こることもあります。
群発頭痛の主な症状は以下の通りです。
- 目の奥をえぐられるような強烈な頭痛
- 目の充血
- 涙目
- 鼻水が出る、鼻づまり
- 顔が赤くなる
痛みで動けなくなるといわれる片頭痛とは対照的に、群発頭痛は痛すぎてじっとしていられなくなる方が多いです。激しい痛みから患者さんのQOLを著しく低下させてしまう可能性が高く、適切な診断と治療が欠かせません。
群発頭痛の痛みは市販の鎮痛薬では改善が難しいため、専門の病院で発作時の痛みを抑える治療や、発作を抑える治療を受ける必要があります。
急性緑内障発作
急性緑内障発作は、眼圧が急激に上昇することで起こる緊急性の高い症状です。主に以下のような症状が見られます。
- 急激な目の痛み
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 視力低下
- かすみ目
初期の緑内障は自覚症状がないことがほとんどですが、急性緑内障発作は急激に症状が進行します。
症状によっては一晩で失明してしまう可能性があり、このような症状が起こった場合はただちに病院を受診しましょう。
即効性のある薬剤や点滴、手術を行い治療します。
眼窩蜂窩織炎
眼窩蜂窩織炎は、眼窩(眼球が収まっているくぼみ)が細菌に感染し、炎症が起こる病気です。
目を開けていられないほどの激しい目の痛みが起こり、適切な治療を行わなければ悪化して失明につながることもあります。
眼窩蜂窩織炎の主な症状は以下の通りです。
- 激しい目の痛み
- 目の充血
- 視力低下
- 眼球突出
- まぶたの腫れ
- 吐き気
- 発熱
眼窩蜂窩織炎は目の痛みや充血、まぶたの腫れといった目の周辺に起こる症状のほか、場合によっては吐き気や発熱といった全身症状が起こることもあります。
副鼻腔炎(鼻の周りの空洞)から感染が眼窩に広がることが多いですが、外傷や虫歯が原因となることもあります。
抗菌薬で治療しますが、重度の場合は入院が必要です。
感染性眼内炎
感染性眼内炎とは、細菌やウイルス、真菌(カビ)、寄生虫などによって眼球内に起こる感染症のことで、炎症による強い目の痛みが生じます。
主な症状は以下の通りです。
- 目の痛み
- 充血
- 目やに
- まぶしさ
- 飛蚊症
- 視力低下
感染性眼内炎は、眼科手術後の合併症として発症することがありますが、外傷や全身感染症からも起こり得ます。
細菌性の場合は重症化しやすく、失明のリスクもある緊急性の高い疾患です。疑わしい症状がある場合は直ちに病院を受診し治療を受けましょう。
原因に応じた薬や抗炎症のための副腎皮質ステロイド投与、硝子体手術によって治療します。
視神経炎
視神経炎は、視神経(物を見るための脳神経)に炎症が起こる疾患で、目の奥の痛みのほか、急激な視力低下が起こることがあります。
主な症状は以下の通りです。
- 目の奥の痛み
- 目を動かしたときに痛む
- 視力低下
- 視野欠損(視野の中心部が暗くなったり、一部が欠ける)
- 色覚異常
- ⽩っぽく霞んで見える
20~40歳の成人に多く見られ、ウイルス感染や腫瘍、多発性硬化症、糖尿病の合併症として起こることもありますが、原因がはっきりしない特発性視神経炎が多いとされています。
点滴でステロイドを短期間に大量に投与し炎症を抑えるステロイドパルス療法などで治療します。
副鼻腔炎(蓄のう症)
副鼻腔炎(蓄のう症)は、副鼻腔(鼻の周囲の空洞)に炎症が起こる病気です。
鼻水や鼻づまりのような鼻に起こる症状のほかにも、目の奥の痛み、おでこ(前頭部)の痛み、頭痛などが見られることがあります。
主な症状は以下の通りです。
- 鼻づまり
- 鼻水
- 後鼻漏(鼻水がのどに流れること)
- 嗅覚障害
- 頭痛
- 顔面の圧迫感
副鼻腔炎は、ウイルスや細菌感染、アレルギー反応などによって引き起こされます。
急性副鼻腔炎の場合は通常1〜3週間で改善しますが、長引くと慢性化して慢性副鼻腔炎となることもあり、早めに治療を受けることが大切です。
抗生物質や抗炎症薬の投与、鼻腔洗浄などで治療します。慢性化した場合や薬物療法で改善しない場合は、手術が検討されることもあります。
脳血管障害
脳血管障害は、脳の血管が障害を受けることで起こる病気の総称です。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」などが含まれます。
脳血管障害では、突然の激しい頭痛が現れることがあり、目の奥の痛みが起こることもあります。
どのような障害が起こるかによって症状は異なりますが、主な症状は以下の通りです。
- 意識障害
- 片麻痺
- ろれつが回らない
- 言葉がうまく出ない
- 頭痛
- 吐き気、嘔吐 など
特に、くも膜下出血では今までに経験したことのないような激しい頭痛が起こることが多いです。ただし、中にはほとんど頭痛を感じず、突然意識を失ってしまうケースもあります。
脳血管障害は生命に関わる緊急疾患であり、すぐに治療が必要です。このような症状が見られた場合は時間帯に関係なく、直ちに医療機関を受診しましょう。
目の奥が痛いときの対処法
目の奥が痛いときの対処法は、以下の通りです。
- 目と体を休める
- 目薬をさす
- ホットタオルやマッサージで血行を良くする
- ストレス解消をする
- 医療機関を受診する
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
目と体を休める
目の奥の痛みを感じたときは、まず目と体を十分に休ませましょう。
長時間のパソコン作業やスマートフォン使用といった目の酷使は眼精疲労を引き起こし、目の奥の痛みの原因となることがあります。
長時間作業をする場合は定期的に休憩を取り、目を休ませることが大切です。
ただし、パソコン作業の合間の休憩でスマートフォンを見てしまっては目が休まりません。モニターを見るのは避け、目を閉じてリラックスしたり、遠くの景色を眺めたりすることで、目の疲れを和らげましょう。
また、姿勢を正すことも重要です。悪い姿勢は首や肩の筋肉を緊張させ、それが目の疲れや痛みにつながることがあります。
デスクワークの際は背筋を伸ばし、画面の上端が目線と同じか、少し下になるよう調整することで、目への負担を軽減できます。
目薬をさす
目を酷使したときの目の痛みには、目薬を使用するのもおすすめです。
例えばドライアイの場合、目に潤いを与え乾燥を防ぐ効果のある目薬を使うと、痛みが良くなることがあります。
ピント調節機能が低下して目がかすむ場合は、ピント調節機能改善成分の「ネオスチグミンメチル硫酸塩」や「シアノコバラミン(ビタミンB12)」を含むものを試してみるといいでしょう。
ただし、自己判断で目薬をさし続けるのは避け、早めに病院で診察を受けることが大切です。
ホットタオルやマッサージで血行を良くする
ホットタオルの使用や目の周りのマッサージによって血行を促すことも、目の奥の痛みを和らげる効果的な方法です。
目の周囲の血行を改善し、筋肉の緊張を緩和することで、痛みの軽減に役立ちます。
ホットタオルのやり方は簡単で、清潔なタオルを温かい水で濡らし、軽く絞って目の上に乗せるだけです。
電子レンジが使える場合は、軽く絞った濡らしたタオルを500Wの電子レンジで30~60秒ほど加熱して温めるといいでしょう。また、熱すぎない温度の湯船にゆっくり浸かるのも効果的です。
デスクワークの合間にマッサージやストレッチを取り入れ、筋肉の緊張をほぐすのもおすすめです。
ストレス解消をする
ストレスは眼精疲労の状態を悪化させることがあり、これが目の奥の痛みを引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
また、ストレスは頭痛とも深い関係があり、片頭痛はストレスが引き金になったり、悪化の原因になったりすることが知られています。
ストレスを完全になくすことは難しいため、自分に合った方法で適度にストレス解消をしましょう。
医療機関を受診する
目の奥が痛む原因の中には緊急性の高い病気もあります。
目の奥の痛みが持続する場合や急激に悪化する場合は、放置せずなるべく早めに医療機関を受診しましょう。
特に、激しい痛みが起こった場合や突然症状が起こった場合は直ちに病院で診てもらうことが大切です。
目の奥が痛むときは何科を受診すればいい?
目の奥が痛むとき、何科を受診すればいいのか迷ってしまう方は多いでしょう。ここでは、いくつかの目安を紹介します。
目だけに症状がある場合
目の痛みや目の充血など、目だけに症状がある場合、まずは眼科を受診するといいでしょう。
ただし、眼科での検査で異常が見られない場合や、目以外の症状も伴う場合は、他の診療科への紹介が行われることもあります。
頭痛が起こっている場合
目の奥の痛みと同時に頭痛が起こっている場合は、MRIやCTの検査機器がある脳神経外科を受診しましょう。
検査機器がない病院だと詳しい検査で脳疾患の有無を確認できないため、来院前に設備を確認しておくことが大切です。
まとめ
目の奥の痛みは、軽度のものから生命に関わる重大な病気まで、さまざまな原因で起こり得ます。
そのため、気になる症状がある場合は自己判断で様子見するのではなく、早めに病院を受診して詳しい検査を受けることが大切です。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」による外来診療を行っています。
丁寧な診察を行い、患者さんの症状や希望に合わせた治療が可能ですので、目の奥の痛みでお悩みの方はぜひお気軽にお問い合わせください。