こめかみが痛い原因│右だけ・左だけ・押すと痛むのはなぜ?治し方も解説

頭痛

「こめかみがズキズキ痛む」

「こめかみの右側(左側)だけ痛い」

頭痛のとき、こめかみに痛みを感じる方は少なくありません。こめかみが痛む原因としては片頭痛や群発頭痛のほか、三叉神経痛や副鼻腔炎、眼精疲労などが考えられます。

また、くも膜下出血や脳出血、脳腫瘍といった重大な病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、こめかみが痛む原因になる頭痛、頭痛以外でこめかみが痛む原因、危険な病気について詳しく解説します。

こめかみが痛む原因になる頭痛

頭痛

こめかみに痛みが起こる頭痛には、主に「片頭痛」と「群発頭痛」があり、痛み方や症状、原因は異なります。

片頭痛 群発頭痛
痛みの特徴 ・ズキズキ、ズキンズキン脈打つような拍動性の痛み ・目をえぐられるような強烈な痛み
痛みが起こる場所 ・こめかみ〜目の周辺の片側(右側もしくは左側)、両側 ・左右どちらかのこめかみ、目の奥
痛みの持続時間 4〜72時間程度 15分〜180分程度
主な症状 ・頭痛
・吐き気、嘔吐
・下痢
・光、音、においに敏感になる
・激しい頭痛
・目の充血、涙、まぶたの下垂
・鼻水、鼻詰まり
・顔面の紅潮

ここからは、それぞれの頭痛について詳しく見ていきましょう。

片頭痛

こめかみの痛みの原因として多く見られるのが、片頭痛です。

片頭痛はその名前の通り、頭の片側(右側もしくは左側)にだけ起こることが多い頭痛ですが、両側に痛みが生じることもあります。

ズキズキ、ズキンズキンといった脈打つような痛みが特徴で、女性に多く、男性の3倍多く見られる頭痛です。

症状

片頭痛の主な症状は、こめかみ周辺の片側のズキズキする痛みです。「何もできない」「動けない」と思うほど強い痛みが起こることが多く、体を動かすと痛みが悪化します。

また、吐き気や嘔吐、場合によっては下痢や腹痛といった消化器症状を伴うこともあります。

「普段よりも音がうるさく感じる、光が眩しく感じる」「いつもは気にならないにおいで気分が悪くなる」など、光や音、においに敏感になることも片頭痛の特徴です。

片頭痛持ちの方の中には、以下のように頭痛が起こる「予兆」や「前兆」を感じる方もいます。

予兆 前兆
起こるタイミング 頭痛が起こる数時間前 頭痛が起こる直前
症状 生あくび、吐き気、肩こり、だるさなど キラキラ・ギザギザした光(閃輝暗点)

痛みが起こる頻度や重症度はさまざまですが、片頭痛は適切な治療をしないと、慢性化(月に15日以上頭痛がみられる状態)してしまうことがあります。

特に、鎮痛剤の飲み過ぎは慢性片頭痛のリスクを高めるため、「頭痛はいつものことだから」と軽く考えず、早めに病院で適切な治療を受けることが大切です。

原因

片頭痛の原因は諸説あり、脳血管が原因で起こる「脳血管説」、中枢神経に原因がある「神経説」、三叉神経が刺激されることによる「三叉神経血管説」といった3つの説があります。

片頭痛が起こるメカニズムは完全には解明されていないものの、痛みが起こる仕組みや原因物質はほぼ特定されており、治療や予防が可能です。

そのほか、以下のようなものが片頭痛の引き金になることがあります。

  • ストレス
  • 睡眠不足、不眠症、寝過ぎ
  • 天候(特に気圧の変化)
  • 疲れ
  • 空腹
  • 強い光や匂いなど過度の刺激
  • アルコール
  • タバコ
  • 特定の食べ物(赤ワイン、チーズ、チョコレート、コーヒーなど)

また、片頭痛には遺伝的要素があるという報告もあり、親や兄弟など家族に片頭痛の方がいる場合、片頭痛になる可能性があります。

治療法・予防法

病院では、注射や薬によって片頭痛の治療や予防を行います。

最近登場したのが、「CGRP受容体拮抗薬」や「選択的5-HT1F受容体作動薬(レイボー®︎)」といった薬です。

「CGRP受容体拮抗薬」は、片頭痛の痛みを引き起こす原因となる「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene-Related Peptide/CGRP)」に作用することで、片頭痛の予防に高い効果を発揮する注射薬です。

月1回の自己注射によって片頭痛を治療できるので、病院に頻繁に通院することが難しい方も無理なくつらい痛みに対処できます。

「選択的5-HT1F受容体作動薬(レイボー®︎)」は、片頭痛発作を起こしている脳の組織や脳神経に直接作用し、痛みを和らげる薬です。予防的な使用はせず、痛みが起きたときに使います。

レイボーは血管収縮作用をもたないため、高血圧、心血管系疾患をお持ちの方でも使用できることが特徴です。

また、セルフケアとして、片頭痛のきっかけとなる要因を避けることも大切です。ストレスを溜め込まないようにし、十分な睡眠と栄養をとって、規則正しい生活を心がけましょう。

群発頭痛

群発頭痛では、じっとしていられないほどの激しい痛みが起こり、「目をえぐられるような痛み」ともいわれます。

群発頭痛は比較的まれで、女性よりも男性に多く見られる頭痛です。

症状

群発頭痛では、こめかみや目の上周辺に強烈な痛みが突然起こります。頭痛と同時に、目の充血や涙、鼻水や鼻詰まり、まぶたの下垂、顔面の紅潮などの症状が現れることもあります。

1回15分〜180分ほどの発作が1日に数回、数日〜数ヶ月ほど続くのが特徴です。

群発頭痛には頭痛発作がある期間に集中して起こる「反復性群発頭痛」と、1年以上頭痛の発作を繰り返す「慢性群発頭痛」があり、いずれも生活に大きな悪影響を及ぼします。

原因

群発頭痛の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、内頸動脈(目の後ろを通る血管)に何らかの原因によって炎症が起き、血管が拡張することで神経が圧迫されて痛みが起こると考えられています。

また、以下のようなものは頭痛を引き起こす原因になると考えられています。

  • アルコールの過剰摂取
  • タバコ
  • 急激な気圧変化
  • 不規則な時間帯の睡眠

治療法・予防法

群発頭痛の治療は、発作時の痛みを抑える治療と、発作の軽減・予防治療の2通りがあります。

  • 発作時の痛みを抑える治療……内服薬、フェイスマスクによる高濃度酸素吸入、点鼻薬、自己注射
  • 発作の軽減・予防治療……内服薬(エルゴタミン製剤、ステロイド薬、カルシウム拮抗薬、炭酸リチウムなど)

群発頭痛は他の頭痛に比べてまれな病気であり、片頭痛持ちの方にも起こるため、なかなか正確な診断がつかないこともあります。

適切な治療のためにも、「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」の資格を取得した医師に診てもらうようにしましょう。

頭痛以外でこめかみが痛む原因

頭痛

こめかみの痛みの原因は、頭痛だけはありません。以下のように、頭痛以外の原因でもこめかみが痛むことがあります。

  • 眼精疲労
  • 三叉神経痛
  • 側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
  • 副鼻腔炎(蓄のう症)
  • 歯痛や顎関節症

ここでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

眼精疲労

目の使い過ぎによって起こる眼精疲労も、こめかみの痛みの原因です。眼精疲労の場合、こめかみの両側に痛みが出たり、こめかみを押すと痛みが出たりします

パソコンやスマートフォン、テレビなどの画面を長時間見続けたり、メガネやコンタクトレンズが合っていないと眼精疲労につながるため注意しましょう。

デスクワークや勉強など、どうしても目を使う必要があるときは、適度に休憩をとり、目を休めることが大切です。

三叉神経痛

三叉神経痛とは、三叉神経(顔の感覚を脳に伝える末梢神経の一つ)に血管が接触することで痛みを感じる疾患です。

三叉神経痛の痛みは数秒〜数十秒程度で消失するのが一般的ですが、非常に痛みが強く「この世で最大の痛み」ともいわれます。

こめかみに触れただけでも一瞬鋭い痛みが走る場合、三叉神経痛の可能性が考えられるでしょう。

三叉神経痛の初期治療は、主に抗てんかん薬の一つであるカルバマゼピンを服用して治療します。

側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)

側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)は、主に頭部の血管(特に浅側頭動脈)に慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患です。

自分自身の免疫が血管の壁を攻撃してしまうことで炎症が引き起こされます。まれな病気で、50歳以上の高齢の女性に見られることが多いです。

側頭動脈炎には、全身の症状と血管が詰まって起こる症状の2つがあります。こめかみ周辺の頭痛も側頭動脈炎の症状の一つです。

  • 全身の症状……倦怠感、発熱、関節痛、体重減少
  • 血管が詰まって起こる症状……こめかみ周辺のズキズキ脈打つような頭痛、頭皮痛、肩や首の痛み、視力低下、視野狭窄

痛み止めの服用では一時的に痛みを抑えることしかできないため、病院を受診してステロイドや免疫抑制薬といった薬を用いた治療を行う必要があります。

副鼻腔炎(蓄のう症)

副鼻腔(鼻周辺にある空洞)の粘膜の炎症によって起こる副鼻腔炎(蓄のう症)も、こめかみの痛みの原因になることがあります。

副鼻腔炎はウイルスや細菌、アレルギーなどによって副鼻腔に炎症が起こり発症します。

膿の混じった黄色や緑の鼻水、鼻詰まり、後鼻漏(鼻水がのどに流れること)、嗅覚障害などが代表的な症状ですが、こめかみや頬、両目の間、額などに頭痛が起こることもあります。

副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎持ちの方に起こりやすく、慢性化しやすいため、花粉シーズンには毎日頭痛が起こることもあります。

抗炎症作用のある薬を使った薬物療法を中心に行い、頭痛がつらい場合は鎮痛剤を使用することもあります。

歯痛や顎関節症

歯痛や顎関節症によってこめかみに痛みを感じるケースもあります。

歯の痛みを伝える三叉神経は頭全体に張り巡らされており、歯痛による刺激をこめかみの痛みとして感じることがあるのです。特に、奥歯の痛みをこめかみの痛みとして感じることが多いです。

また、顎の筋肉の異常によって起こるタイプの顎関節症(I型)も、こめかみに痛みが生じる原因です。

このタイプの顎関節症は咀嚼筋(咬筋、側頭筋)の使い過ぎが原因で、こめかみ部分の側頭筋に生じた痛みを頭痛として感じる方もいます。

歯痛や顎関節症の場合は、歯科医院での治療が必要です。

こめかみに痛みが現れる危険な病気

頭痛

こめかみの痛みの裏に、脳血管障害(脳出血・くも膜下出血)、脳腫瘍など、命の危険がある重大な病気が隠れている可能性もあります。

脳血管障害(脳出血・くも膜下出血)

脳血管障害(脳出血・くも膜下出血)によって、こめかみに痛みが現れることがあります。脳出血とくも膜下出血はどちらも脳の血管が破れて出血が起こるものですが、血管の破れる場所が異なります。

脳出血は、脳の細い血管が破れることで起こり、前触れなく突然発症することが特徴です。

急性の頭痛のほか、半身の運動麻痺や感覚障害、顔の麻痺、しゃべりにくい、言葉が出にくいなどの症状が見られます。

くも膜下出血は、脳動脈瘤(脳の動脈にできた瘤)が破裂することで起こります。

多くの場合、バットで殴られたような強烈な頭痛が突然起こり、出血量が多いと一気に意識を失うこともあります。

いずれも緊急性が高く、ただちに救急車を呼ぶ必要があります。

脳腫瘍

脳腫瘍は、頭蓋骨内にできる腫瘍の総称です。

正常な細胞が腫瘍に変わる「原発性脳腫瘍」と、脳以外の場所で発生した悪性腫瘍の転移による「転移性脳腫瘍」の2つに分けられます。

脳腫瘍が大きくなると、脳を圧迫し、頭痛や吐き気、めまい、麻痺、けいれんなどの症状を引き起こします。

脳腫瘍の場合、徐々に症状が進行していくことが特徴です。こめかみの痛みが日に日に悪化していくといった場合は、早めに脳神経外科を受診してMRI検査を受けましょう。

まとめ

こめかみが痛む原因はさまざまです。

多く見られるのは片頭痛ですが、脳血管障害(脳出血・くも膜下出血)、脳腫瘍といった命にかかわる重大な病気が隠れている可能性もゼロではありません。

また、何もできないほどの痛みが起こる片頭痛は、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響与えてしまう病気です。

片頭痛で痛みが起こるメカニズムや原因物質はほぼ特定されており、痛みの緩和や予防ができます。

脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」の資格を取得した医師による外来診療を行っています。

片頭痛の予防薬「CGRP受容体拮抗薬」や高血圧・心血管系疾患の方も使用できる「選択的5-HT1F受容体作動薬(レイボー®︎)」など、患者さんの症状に合わせた治療が可能です。

脳ドックも行っておりますので、ぜひまずは一度お気軽にお問い合わせください。

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