顔がぴくぴくと動く、目の周りが勝手に痙攣するなどの症状が続くと、不安に感じる方も多いでしょう。
疲れやストレスのせいだと思って様子を見る人もいますが、実は『顔面痙攣』という神経の病気が隠れていることがあります。
軽い症状のうちは自然に治まることもありますが、進行すると頬や口元まで痙攣が広がり、表情がゆがんで見えることもあるため注意が必要です。
この記事では、顔面痙攣の受診すべき診療科について詳しく解説します。
顔面痙攣の原因や検査・診断方法、治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
顔面痙攣とは

顔面痙攣とは、顔の筋肉が自分の意思とは関係なくぴくぴくと動いてしまう病気です。
多くの場合、顔の片側だけに起こり、初めは目の周りの小さな痙攣から始まります。
症状が進行すると頬や口の周囲、あごまで広がることもあります。
顔がぴくぴく動くことで、人との会話や表情づくりが難しくなり、強いストレスを感じる人も少なくありません。
重症化すると目を閉じたままになったり、運転や日常生活に支障が出ることもあります。
ここでは顔面痙攣の症状の特徴・原因・種類について解説します。
顔面痙攣の症状の特徴
顔面痙攣は、通常顔の片側だけにぴくぴくとした痙攣が起こる点が特徴です。
両側に痙攣が現れる場合もありますが、非常にまれなケースです。
また、両側の目の周囲が痙攣する疾患として、別の疾患が存在します。
最初はまぶたが少し動く程度から始まり、次第に頬や口元、あごなどにも広がる場合も少なくありません。
痙攣は短い時間で治まることもあれば、しばらく続くこともあり、緊張や疲れ、ストレスによって悪化する傾向があります。
痙攣が強くなると、目が勝手に閉じてしまったり、口がゆがんで見えたりすることもあり、表情をコントロールできなくなってしまう点も特徴です。
重度になると寝ている間にも痙攣が起きたり、話す・食べるといった日常動作にも支障が出たりすることがあります。
顔面痙攣が起こる原因
顔面痙攣の主な原因は、顔の動きをつかさどる顔面神経に、血管が接触してしまうことです。
動脈が神経に触れ、化学的変化が起こると、神経に異常な電気信号が発生し、筋肉が勝手に動いてしまいます。
まれに、脳の中にできた腫瘍が神経を圧迫して起こることもあります。
中にははっきりとした原因が見つからない『特発性顔面痙攣』もあり、この場合は遺伝や体質、生活習慣などが関係している可能性が考えられるでしょう。
顔面痙攣は命に関わる病気ではありませんが、脳腫瘍などが原因となっていることもあるため、「そのうち治る」と放置せず、MRI検査などで原因を確認することが大切です。
顔がぴくぴくする病気の種類
顔がぴくぴくする病気にはいくつかの種類があります。
代表的なのは『片側顔面痙攣』、『眼瞼痙攣』、『眼瞼ミオキミア』などです。
| 片側顔面痙攣 | 特に多く見られるタイプで、顔の左右どちらか一方に起こる。初期は目の周りのみに痙攣が起き、次第に頬や口元にまで症状が広がることがある。 |
|---|---|
| 眼瞼痙攣 | 両目の周りの筋肉が痙攣し、まぶたを開けにくくなる |
| 眼瞼ミオキミア | 疲労やストレスが原因でまぶたが痙攣する |
顔全体に広がるようなぴくつきがある場合や症状が長引く場合は、脳神経外科や神経内科で正確な診断を受けましょう。
顔面痙攣は何科?病院は受診するべき?

顔面痙攣は命に関わる病気ではありませんが、進行すると日常生活に支障をきたすことがあります。
そのため、軽い症状でも放置せず、適切な診療科を受診することが大切です。
ここでは顔面痙攣の症状がある場合に受診すべき診療科について解説します。
顔面痙攣の治療は本人次第
顔面痙攣は、基本的に命に関わる病気ではありません。
そのため、症状が軽ければ必ずしも治療が必要というわけではなく、「治すかどうか」は本人の意思に任されることが多いです。
例えば仕事や生活に支障がなく、見た目もあまり気にならない程度であれば、経過観察で様子を見る方もいます。
しかし、痙攣の頻度が増えたり、頬や口にまで症状が広がってきた場合は注意が必要です。
目が勝手に閉じるようになると、車の運転や家事などにも支障をきたすようになるのです。
特に、人と接する機会の多い職業の方は、見た目の影響も気にして治療を選ぶ傾向があります。
治療方法には、ボトックス注射や薬物療法、手術などがあります。
症状が軽いうちは焦らず、医師と相談しながら治療を検討すると良いでしょう。
顔面痙攣の重症化を防ぐためには受診が大切
顔面痙攣は、初期のうちは目の周りの小さなぴくつきだけで済むことが多いですが、放置していると頬や口、あごへと広がり、顔の片側全体が痙攣するようになることがあります。
重症化すると、目が閉じたままになって視界が遮られたり、食事がしづらくなったりと、生活に大きな影響を与えるようになるため注意が必要です。
また、痙攣が続くことで筋肉が常に緊張状態となり、顔の左右差が目立つようになる場合もあります。
見た目の変化がストレスや不安を引き起こし、精神的に落ち込む方も少なくありません。
さらに、まれではありますが、顔面痙攣の背後に脳腫瘍や動脈瘤などの病気が隠れているケースもあります。
そのため、「顔がぴくぴくするだけ」と放っておくのは危険です。
症状が軽いうちに病院を受診し、専門的な検査で脳や神経の状態を確認することで、重症化を防ぐことができます。
顔面痙攣は神経内科・脳神経外科を受診する
顔面痙攣の原因は頭蓋内の神経にあるため、脳神経内科または、脳神経外科を受診するのが基本です。
脳神経内科では、薬物療法やボトックス注射などの治療を中心に行います。
一方で、脳神経外科では、血管が神経を圧迫している場合にその圧迫を取り除く手術にも対応できます。
症状の進行度や原因に応じて、適切な診療科を選ぶことが大切です。
さらに最も大切なことは、できるだけ、内服治療、ボトックス治療、手術とすべての治療に対応しているクリニックや病院を受診することです。
また、症状がまぶただけに現れている場合は、ひとまず眼科で診てもらうのも一つの方法でしょう。
顔のぴくつきが続くときは、まず神経の専門医に相談し、必要に応じて治療や検査を進めていきましょう。
顔面痙攣の検査・診断方法

顔面痙攣は、顔の痙攣の様子の観察とMRI検査、MRA検査によって診断されます。
まず医師は、痙攣が顔のどちら側に出ているか、どの部分まで広がっているかを確認します。
診察のときに痙攣が出ないこともあるため、家で症状が出たときに動画を撮っておくと、診断がスムーズになるでしょう。
次に行うのがMRI検査です。
MRI検査は体の中を詳しく調べる検査で、顔面神経を圧迫している血管があるかどうかを確認します。
さらに神経を圧迫している血管の場所や形のほかに、脳腫瘍や動脈瘤など、ほかの病気がないかも調べられます。
その次に行うMRA検査は、脳血管を立体画像化する検査です。
この検査により、重篤な病気の原因となり得る脳動脈瘤や脳動静脈奇形の有無、虚血性及び出血性脳卒中のリスクなどを調べられます。
このような検査によって原因をはっきりさせることで、正確な診断を行えます。
顔のぴくつきが続く場合は早めに医療機関を受診し、必要に応じて専門的な検査を受けましょう。
顔面痙攣の治療方法

顔面痙攣の治療は、症状の強さや原因によって方法が異なります。
主な治療方法は以下の3つです。
- 薬物療法
- ボトックス注射
- 手術療法
軽い症状であれば、内服治療やボトックス注射を検討することが多いですが、痙攣が強くなってきて日常生活に支障が出たりする場合は、手術を選択する場合が多いです。
いずれの治療も、医師と相談しながら自分に合った方法を選ぶことが大切です。
薬物療法
薬物療法は、顔面痙攣の治療の中で特に体への負担が少なく、初期治療として選ばれる方法です。
神経の興奮を抑える薬を使って、痙攣の強さを和らげます。
ただし、薬では痙攣の頻度を軽減することは難しく、また、副作用として眠気、ふらつきが出現することもあり、仕事や運転に影響するので、注意が必要です。
そのため、医師と相談しながら薬を調整していくことが大切です。
また、薬物療法は一時的な対処には向いていますが、原因そのものを取り除く治療ではありません。
症状が軽いうちは薬で様子を見て、改善が見られない場合はほかの治療法を検討するのが良いでしょう。
ボトックス注射
ボトックス注射は、ボツリヌス菌という細菌から作られた成分を、痙攣している筋肉に少量注射する治療方法です。
この成分が筋肉と神経のつながりを一時的にブロックし、筋肉の動きを和らげて痙攣を抑える効果が期待できます。
注射の効果が持続する期間は、一般的に2〜3か月程度です。
その後、再び痙攣が出てくるため、年に4〜5回程度の注射を繰り返す必要があります。
外来で短時間で行える治療のため、仕事や家事を休むことなく受けられる点がメリットです。
また、薬のように眠気などの全身的な副作用がほとんどないのも特徴です。
一方で、注射を打つ部位や量によっては、顔の左右差が強くなったり表情が不自然に見えたりすることもあります。
そのため、経験のある医師のもとで治療を受けることが大切です。
手術療法
薬やボトックス注射で効果が得られない場合、根本的に治療したい方には手術療法(微小血管減圧術:MVD)が検討されます。
この手術は、顔面神経を圧迫している血管を直接移動させ固定し、神経から血管を完全に離す方法です。
手術は全身麻酔で行われ、耳の後ろを少し切開して行います。
原因となる血管を移動させるため、薬や注射のように繰り返す必要がなく、唯一の根本治療とされています。
ただし、開頭手術であるため入院が必要で、聴力の低下などの合併症が起こるリスクもわずかにある点には注意が必要です。
手術療法は、日常生活に大きな支障が出ている方や長年痙攣に悩まされている方に有力な選択肢となるでしょう。
顔面痙攣に関するよくある質問

顔面痙攣に関するよくある質問をまとめました。
- 顔面痙攣で考えられる病気はありますか?
- ストレスや疲れで顔面痙攣が起こることはありますか?
- 顔面痙攣は自然に治まりますか?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
顔面痙攣で考えられる病気はありますか?
顔面痙攣で考えられる病気として、以下が挙げられます。
- 片側顔面痙攣
- 顔面神経麻痺
- 眼瞼痙攣
- チック障害
- 不安障害
- うつ病
- てんかん
- ミオクローヌス
- 筋痙縮
短期間で自然に治るものもありますが、長く続く・範囲が広がる・痛みを伴うなどの場合は、顔面痙攣や神経の病気が隠れている可能性があります。
まずは脳神経内科や脳神経外科を受診し、原因を調べましょう。
ストレスや疲れで顔面痙攣が起こることはありますか?
ストレスや疲れが原因でまぶたがぴくぴくすることがあります。
これは『眼瞼ミオキミア』と呼ばれる一時的な現象で、睡眠不足やパソコン・スマホの使いすぎ、カフェインのとりすぎなどが関係しています。
多くの場合は数日〜数週間で自然に治まり、特別な治療は必要ありません。
しかし注意したいのは、症状が「目の周りだけでなく頬や口の方まで広がる」場合です。
このようなときは単なる疲れではなく、片側顔面痙攣の可能性が高くなります。
また、痙攣が長く続く場合や顔の片側全体が動くようになってきた場合も、神経の圧迫や脳の異常が原因のことがあります。
ストレスによる一時的な症状であれば、しっかり休んだりリラックスしたりすることで改善することが多いですが、「いつもと違う」と感じたときは放置せず早めに専門医の診察を受けましょう。
顔面痙攣は自然に治りますか?
軽い疲れやストレスによるまぶたのピクピクは、多くの場合自然に治りますが、顔面痙攣そのものは自然に治ることはほとんどありません。
放置すると痙攣が顔全体に広がったり、常に目が閉じてしまうような重い症状に進むこともあります。
顔面痙攣は、顔面神経が血管に押されて起こるため、原因を取り除かない限り症状はなくなりません。
薬やボトックス注射で一時的に痙攣を抑えることはできますが、根本的に治すには手術が必要になる場合もあります。
顔の動きに違和感を感じたら、早めに神経内科や脳神経外科を受診して、原因を明らかにすることが大切です。
まとめ
顔面痙攣は、顔の筋肉を動かす神経が血管に圧迫されることで起こる病気です。
最初はまぶたの小さなぴくつきから始まり、放っておくと顔の片側全体に広がることがあります。
痙攣が続く場合や生活に支障が出ている場合は、脳神経内科や脳神経外科の受診が必要です。
顔の痙攣が気になる場合は、疲れやストレスの一時的な症状と思って放置せず、早めに専門医に相談しましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、ボトックス注射と手術療法による顔面痙攣の治療に対応しています。
顔面痙攣の症状にお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。









