睡眠不足は頭痛を引き起こす代表的な原因の一つです。
睡眠中、脳や体は疲労を回復し、神経や血流のバランスを整えています。
しかし、十分な睡眠がとれないとこの働きがうまくいかず、血管の過収縮・過拡張やホルモンバランスの異常が起こりやすくなります。
その結果、片頭痛や緊張型頭痛などの痛みが現れるのです。
この記事では、寝不足により起こる頭痛について詳しく解説します。
寝不足が原因で頭痛が起こるときの対処法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
寝不足で頭痛が起こる原因

寝不足で頭痛が起こる主な原因は以下の2つです。
- 血管の過収縮や過拡張
- ホルモンバランスの異常
ここでは上記2つの原因についてそれぞれ解説します。
血管の過収縮や過拡張
寝不足による頭痛の原因の一つが、血管の過収縮や過拡張です。
人の脳には常に血液が流れていますが、睡眠不足になるとこの血流のバランスが崩れます。
寝不足でストレスが増えると交感神経が優位になり、血管が収縮して血流が悪くなります。
その結果、脳に十分な酸素や栄養が行き届かず、頭痛を感じやすくなるのです。
また、血流が滞ることで体は一時的にセロトニンという物質を分泌します。
セロトニンは血管を拡張させる作用を持っており、この急な拡張が脳の神経を刺激して「ズキズキするような痛み」を引き起こす一因といわれています。
つまり、血管が縮んだり広がったりを繰り返すことが痛みの原因となるのです。
ホルモンバランスの異常
睡眠不足はホルモンバランスにも大きな影響を与えます。
睡眠中には体の修復や回復に関わるホルモンが分泌されますが、寝不足が続くとこれらの分泌が乱れ、体のリズムが崩れてしまうのです。
また、寝不足が続くと脳への血流が不足してしまい、結果として頭痛が起こることもあります。
ホルモンバランスの乱れを防ぐためには、一定の時間に寝起きするなど生活リズムを整えることが大切です。
寝不足により起こる頭痛の種類

寝不足により起こる頭痛の種類として、以下の2つが挙げられます。
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
ここでは上記2つの種類についてそれぞれ解説します。
片頭痛
片頭痛は、寝不足によって起こりやすい代表的な頭痛の一つです。
主に頭の片側にズキズキと脈打つような痛みが現れ、ひどいときには吐き気や光・音に敏感になります。
原因は明確には解明されていませんが、寝不足が続くと脳内の神経伝達物質であるセロトニンのバランスが崩れ、血管の拡張や神経の興奮を引き起こすことで片頭痛が起こると考えられています。
片頭痛は数時間から長いと3日ほど続くことがあり、動いたり明るい場所に出たりすると痛みが強まるのが特徴です。
睡眠リズムを整え、体内時計を一定に保つことが大切です。
生活習慣を整えることで症状の改善が期待できます。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが続くタイプの頭痛で、寝不足やストレス、長時間のデスクワークなどが主な原因です。
寝不足が続くと筋肉が十分に休まらず、肩や首まわりの筋肉がこり固まって血流が悪くなります。
その結果、頭部の筋肉にも疲労がたまり、圧迫されるような痛みを感じるようになるのです。
緊張型頭痛は片頭痛のように強い痛みではありませんが、重だるさや集中力の低下を引き起こすため、日常生活に支障をきたすこともあります。
寝不足による緊張型頭痛を防ぐには、十分な睡眠と休息を取ることが第一です。
また、日中にこまめにストレッチを行ったり、ぬるめのお風呂で体を温めたりすることで筋肉の緊張を和らげることができます。
片頭痛と同様に規則正しい生活を心がけることで、再発予防にもつながるでしょう。
寝不足が原因で頭痛が起こるときの対処法

寝不足が原因で頭痛が起こるときには、以下の対処法を試してみましょう。
- 自分に適した睡眠時間を確保する
- 薬を服用する
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 睡眠環境を整える
- 栄養をしっかり摂る
- カフェインやアルコールの摂取を控える
- ストレスをため込まない
- 頭痛を軽減するツボを押す
- 医療機関を受診する
ここでは上記の対処法についてそれぞれ解説します。
自分に適した睡眠時間を確保する
寝不足による頭痛を防ぐためには、まず自分に合った睡眠時間を確保することが大切です。
一般的に成人の理想的な睡眠時間は7時間以上とされていますが、必要な時間は人によって異なります。
日中に強い眠気を感じない、集中力が保てるなど、自分の体調を目安にして睡眠時間を調整しましょう。
また、睡眠の『長さ』だけでなく『質』も重要です。
寝る2〜3時間前に入浴して体を温めると、自然と眠気が訪れやすくなります。
自分の体に合った睡眠リズムをつくることで、寝不足による頭痛の予防につながります。
薬を服用する
寝不足による頭痛が強く、日常生活に支障をきたす場合は、市販の鎮痛薬を使用して痛みを抑えるのも一つの方法です。
鎮痛薬は、痛みの原因となる物質『プロスタグランジン』の働きを抑えることで、頭痛を和らげます。
特に、痛みがひどくなる前に早めに服用すると効果が出やすいとされています。
ただし、薬に頼りすぎるのは注意が必要です。
鎮痛薬や精神に作用する薬剤を頻繁に服用していると『薬剤の使用過多による頭痛(MOH)』と呼ばれる新たな頭痛が起こることがあります。
これは、薬を飲みすぎることで脳が痛みに過敏になってしまう状態です。
痛みが頻繁に起こる場合は、市販薬で済ませず、早めに医療機関を受診して原因を確かめましょう。
規則正しい生活リズムを心がける
寝不足による頭痛を予防するには、規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣をつけることで、体内時計が安定しやすくなります。
朝はしっかり日光を浴びて体を目覚めさせ、夜は照明を少し暗くして自然に眠りに入れる環境をつくりましょう。
また、日中の昼寝は長く取りすぎないよう注意が必要です。
昼寝をする場合は15〜30分以内、午後3時までに終えるのが理想です。
規則正しい生活を続けることで、自然と睡眠の質も向上していくでしょう。
睡眠環境を整える
寝不足による頭痛を防ぐには、まず睡眠環境を整えることが重要です。
寝室は静かで暗く、適切な室温・湿度を保つようにしましょう。
明るすぎる照明やテレビ、スマートフォンの画面の光は脳を刺激して眠りを妨げるため、寝る30分前には画面を見ないようにすることをおすすめします。
また、寝具の見直しも大切です。
体に合っていないマットレスや枕を使っていると、肩や首に負担がかかり、睡眠の質が下がってしまいます。
起きたときに体がだるい、首が痛いと感じる場合は、マットレスや枕の硬さ・高さを変えてみるのがおすすめです。
適度に運動する
日中に軽い運動を取り入れることで、寝不足からくる頭痛の予防につながります。
運動をすると一時的に体温が上がり、その後ゆるやかに下がることで自然と眠気が訪れやすくなるのです。
また、運動によって『セロトニン』が分泌され、気分が安定しやすくなり、ストレスによる頭痛の緩和にもつながります。
ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動がおすすめです。
特に緊張型頭痛がある人は、肩や首の筋肉をほぐすストレッチをすると血流が改善し、痛みが和らぎやすくなります。
ただし、就寝直前の激しい運動は体が興奮して眠りにくくなるため、寝る2時間前までに済ませるようにしましょう。
栄養をしっかり摂る
寝不足による頭痛を防ぐには、バランスの取れた食事を意識することが大切です。
栄養が不足すると、体の回復力や神経の働きが乱れ、頭痛が起こりやすくなります。
特に意識して摂取したいのは、ビタミンB2とマグネシウムの2つです。
| 主な効果 | 含まれる食品 | |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | 慢性的な疲れやストレスによる緊張を和らげる | 豚レバー、さば水煮缶、卵、アーモンドなど |
| マグネシウム | 筋肉の緊張を緩め、神経の興奮を抑える | 青のり、わかめ、ナッツ類など |
これらを意識的に摂ることで、体の緊張が和らぎ、睡眠の質も高まります。
食事だけで補いにくい場合は、サプリメントを活用するのもよいでしょう。
カフェインやアルコールの摂取を控える
コーヒーやお茶に含まれるカフェイン、そしてアルコールは、一時的に眠気を覚ます効果やリラックス効果があるように思われますが、実際は睡眠の質を下げる原因になります。
特に寝る前に摂取すると、浅い眠りが続いて脳が十分に休めず、翌朝の頭痛を引き起こすことがあります。
カフェインは摂取後に効果が数時間続くため、午後以降の摂取は控えるのが理想です。
アルコールも寝つきをよくするように感じますが、途中で目が覚めやすくなり、熟睡できなくなります。
寝る前は水や白湯、カフェインレスのハーブティーなどに置き換えるのがおすすめです。
ストレスをため込まない
ストレスは睡眠の質を低下させ、頭痛を悪化させる大きな原因の一つです。
仕事や人間関係の悩みでストレスを感じると、体は緊張状態になり、自律神経のバランスが乱れます。
これにより血管の収縮や筋肉のこりが起こり、頭痛につながるのです。
ストレスをためないためには、リラックスする時間を意識的につくることが大切です。
ゆっくりお風呂に入る、深呼吸をする、軽いストレッチをするなど、短時間でも体を休める習慣を持ちましょう。
好きな音楽を聴いたり、趣味に没頭したりするのも効果的です。
頭痛を軽減するツボを押す
寝不足による頭痛を軽減するためには、ツボを押すのも効果的です。
- 合谷:親指と人差し指の間にあるくぼみ
- 手三里:肘を曲げたときにできるシワの約5cm下
- 陽陵泉:ひざ下の外側にある骨の出っ張りのすぐ下にあるくぼみ
- 太陽:眉尻と目尻を結んだ線の真ん中から少しこめかみ側
- 印堂:眉間のちょうど中心
頭痛を軽減するツボは手足や顔などさまざまな場所にありますが、太陽や印堂などの眼球周辺のツボを押す場合は、無理に強く押さないように注意しましょう。
ツボを押すときは気持ち良いと感じる程度の力で行うのがポイントです。
医療機関を受診する
生活習慣を見直しても頭痛が続く場合は、医療機関を受診しましょう。
寝不足が原因と思っていても、実際には別の病気が関係していることもあります。
例えば片頭痛や緊張型頭痛だけでなく、脳の血管や神経に関わる重篤な病気の可能性もあるため、自己判断は危険です。
また、市販の鎮痛薬などを頻繁に使用している場合は『薬物乱用頭痛』のリスクもあります。
痛み止めを飲んでも改善しない、頭痛が週に何度も起こる、吐き気やめまいを伴うといった症状がある場合は、早めに頭痛外来や脳神経外科を受診しましょう。
医師の診察を受けて原因を特定し、適切な治療を行うことで、頭痛の再発を防ぐことができます。
寝不足によって起こる症状は頭痛だけではない

寝不足が続くと起こるのは頭痛だけではありません。
十分な睡眠がとれないと脳や体の回復が追いつかず、以下のようにさまざまな不調が現れます。
- めまい
- 免疫力の低下
- 高血圧
- 体重増加
- うつ病
- 胃腸症状
慢性的な寝不足は集中力や判断力の低下を引き起こし、イライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりすることがあります。
これが続くと、うつ病や不安障害を引き起こすリスクも高まります。
さらに寝不足は自律神経にも影響するため、高血圧や胃腸の不調、肌荒れなどの症状が出ることも少なくありません。
上記のような症状を感じたら、早めに睡眠習慣を見直し、必要であれば医療機関に相談しましょう。
頭痛が慢性化している場合は寝不足以外に原因がある場合も

長期間にわたって頭痛が続く場合は、睡眠不足だけでなく、脳や血管の病気、ホルモンバランス、自律神経の乱れなど、ほかの要因が関係していることがあります。
特に、これまでに経験したことのない強い痛みや、吐き気・めまいを伴う場合は注意が必要です。
寝不足以外の原因として、以下のようなものがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 高血圧
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳梗塞
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
特に代表的なものが『くも膜下出血』で、今までに経験したことのないほどの激しい痛みが突然起こります。
意識を失ったり、吐き気を伴ったりすることもあり、早急な治療が必要です。
このように、頭痛が長く続く場合や普段と違う痛みを感じる場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
MRIやCTなどの検査で原因を特定することで、適切な治療につながります。
まとめ
寝不足による頭痛は、生活リズムの乱れや睡眠の質の低下が主な原因です。
十分な睡眠時間を確保し、快適な睡眠環境を整えることで、改善が期待できる場合が多いです。
ただし、頭痛が何日も続く、今までにない強い痛みが突然起こる、吐き気やめまいを伴うなどの症状がある場合は寝不足以外の病気が隠れている可能性もあります。
くも膜下出血や脳腫瘍など、重大な病気が原因となっている場合もあるため、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、頭痛外来専門医による頭痛外来診療を行っています。
症状に適した治療が可能なため、頭痛にお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。









