歯科インプラント治療後に脳ドックは受けられる？安全性や注意点について解説

インプラントとは

インプラントとは、歯を失った部分に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法のことです。

正式には『デンタルインプラント』と呼ばれるもので、顎の骨に直接固定するため、入れ歯のようにズレたり隣の歯に負担をかけたりすることがありません。

素材にはチタンやチタン合金が使われており、体にやさしく、骨としっかり結合する性質があります。

もともと『インプラント』という言葉は『体内に埋め込むもの』を意味し、歯科以外にも人工関節や心臓ペースメーカーなどにも使われています。

つまり、歯科インプラントは『歯に埋め込むタイプの人工歯根』を指しており、医療分野の中でも広く利用されている技術のひとつです。

脳ドックとは

脳ドックは、脳や血管の状態を詳しく調べるための検査です。

MRIやMRAといった検査機器を使い、脳梗塞、脳動脈瘤、脳腫瘍などの病気の早期発見を目的としています。

MRI検査では、強い磁場を利用して体内の断面を撮影します。

放射線を使わないため被ばくの心配がなく、体への負担も少ない検査です。

ただし、体内にペースメーカーや人工内耳などの金属を使った医療機器がある場合は、磁場の影響で検査に悪影響を及ぼす恐れが懸念され、MRI検査を受けられないことがあります。

そのため、検査前には必ず金属の有無を申告しなくてはいけません。

インプラント治療後でも脳ドックは受けられる

結論から言うと、歯科インプラント治療後でも基本的に脳ドックは受けられます。

理由は、インプラントに使われている金属が『チタン』や『チタン合金』といった磁力に反応しにくい素材のためです。

チタンは磁石に吸い寄せられない性質を持っており、MRIの強い磁場でも影響を受けません。

ただし、磁石で入れ歯を固定する『磁性アタッチメント』を使用している場合は、画像にノイズが出ることがあります。

その際は検査前に医師へ伝えておきましょう。

一般的なデンタルインプラントであれば、発熱による火傷などの危険性は極めて低いため、安心して脳ドックを受けられます。

オーバーデンチャーを使用している

オーバーデンチャーとは、インプラントを支えにして使う『取り外し式の入れ歯』のことです。

このタイプの入れ歯では、固定するために磁石を利用するものがあります。

磁石を使うと入れ歯の装着が安定するという利点がありますが、MRI検査ではこの磁石が問題になる場合があります。

MRIは強い磁力を使って撮影するため、磁石付きの入れ歯を装着したまま検査を行うと、機器の故障や画像の乱れにつながる恐れがあるのです。

そのため、磁石を使っているオーバーデンチャーを使用している場合は、検査前に歯科医院で素材を確認することが大切です。

なお、すべてのオーバーデンチャーが磁石を使っているわけではありません。

磁石を使用していないタイプであれば問題なくMRI検査を受けられる場合も多いため、どのタイプか不明な場合は、事前に歯科医師に確認しておくと安心です。

医療用インプラントを使用している

医療用インプラントとは、歯科以外の治療で体内に埋め込まれる人工物のことをいいます。

代表的なものには心臓ペースメーカーや人工内耳、人工関節、脳動脈クリップ、ステントなどがあります。

これらの医療用インプラントの中には、強い磁力に反応する素材が使われているものもあり、MRI検査中に誤作動や発熱を起こす危険があるため注意が必要です。

医療用インプラントを使用している方は、検査を受ける前に必ず主治医に相談し、MRI検査が可能かどうかを確認しましょう。

チタンの場合は問題ないことが多い

歯科インプラントで特に多く使われている素材が『チタン』または『チタン合金』です。

チタンは磁石に引き寄せられない非磁性体の金属であるため、MRI検査で影響を受けることはほとんどありません。

そのため、チタン製のインプラントを入れている場合は、基本的に脳ドックやMRI検査を受けても安全とされています。

歯科インプラントにチタンが採用される主な理由は以下の通りです。

• 生体親和性が高く、骨としっかり結合しやすい
• 金属アレルギーを起こしにくい
• 耐久性に優れている

チタンはこうした理由から、歯科治療では信頼性の高い素材として広く使われています。

ただし、まれにチタンに対してアレルギー反応を起こす人もいるため注意が必要です。

その場合はチタンではなく別の素材を採用することになります。

不安な場合は、歯科医師とMRI検査を受ける医療機関の医師に相談してみてください。

基本的にはチタン製インプラントであれば、脳ドックのMRI検査に支障はないと考えてよいでしょう。

MRI画像の歪みの原因

MRI検査では、体内の水分に磁場を当てることで断面画像を作り出しています。

しかし体内に金属があると、その金属が磁場を乱してしまうことがあります。

磁場が乱れると画像の一部がぼやけたり、歪んで映ったり、黒い影のようなノイズが発生することがあり、正確な診断が難しくなるのです。

特に脳の検査では、わずかな歪みでも病変の見逃しにつながる恐れがあるため注意が必要です。

ただし、一般的な歯科インプラントに使われるチタンは磁石に反応しにくい非磁性金属であるため、画像が乱れることはほとんどありません。

しかし格安インプラントや認可を受けていない製品など、素材が明確でないものを使用している場合にトラブルが起こりやすいとされています。

もし自身のインプラントの素材が分からない場合は、事前に歯科医師に確認しておくと安心です。

金属部分の発熱

MRI検査では強力な磁場が発生するため、磁石に反応する金属が体内にあると、電流が生じて発熱することがあります。

この熱によって皮膚や周囲の組織に火傷が起こる恐れがあるのです。

特に、チタン以外の金属が使われている場合は注意が必要です。

歯科インプラントの多くはチタン製のため安全とされますが、メーカーや治療時期によっては異なる素材が使われていることもあります。

そのため、検査を受ける前にインプラントの材質やメーカーを確認し、医療機関に伝えておくことが大切です。

チタン製のインプラントであれば発熱の心配はほとんどなく、安全に検査を受けられるケースが多いです。

上部構造のみを外す

「インプラントがあるからMRI検査は受けられない」と言われた場合は、インプラントをすべて外す必要はありません。

多くのケースでは、被せ物にあたる上部構造のみを外すことで問題なく検査を受けられます。

インプラントは『顎の骨に埋め込まれた本体（フィクスチャー）』と『その上に固定された人工歯（上部構造）』に分かれています。

このうち本体部分がチタン製であれば、磁力に反応しないためMRIに影響を与えません。

外すのは、あくまで上部構造のみで十分です。

ただし、上部構造を外せるのはスクリュー固定式のインプラントに限られます。

セメントで固定しているタイプは外せないため、検査前に歯科医師に確認しましょう。

検査後は再び装着できるため、安心して検査を受けられます。

チタン製であることを説明する

MRI検査を断られる理由の多くは、医師が「インプラント＝磁力に反応する金属」と誤解していることにあります。

特に年配の医師の中には、医療用インプラント（ペースメーカーや人工内耳など）と歯科インプラントを混同してしまうケースが少なくありません。

そのため、自身のインプラントがチタン製である場合は「チタン製なので、MRIに影響はありません」と説明するとよいでしょう。

チタンは医療現場で広く使われており、安全性が高い素材として認められています。

医師や放射線技師もチタンの性質を理解しているため、正確に伝えることで検査を受けられる可能性が高まります。

歯科医師に相談する

自分のインプラントがどの素材でできているか分からない場合や、MRI検査を受けても大丈夫か不安な場合は、必ず治療を受けた歯科医院に相談してください。

歯科医師は使用したインプラントのメーカーや素材を把握しているため、MRI検査を受けても安全かどうかを正確に判断してくれます。

また、歯科医院から検査を行う病院へ「チタン製インプラントであり、MRI検査に支障がない」といった説明をしてもらうことで、検査がスムーズに進む場合もあります。

自己判断で「大丈夫だろう」と決めてしまうのは危険です。

少しでも不安があるときは、トラブルを未然に防ぐためにも必ず医師に確認しましょう。