頭痛と耳鳴りはどちらも日常的に起こりやすい症状ですが、同時に現れる場合は脳や耳の神経、血流などに不調が生じていることがあります。
片頭痛やメニエール病などの耳の病気だけでなく、更年期障害やストレス、自律神経の乱れが原因となることも少なくありません。
症状が軽い場合は安静に過ごすことで落ち着くこともありますが、何度も症状を繰り返したり、強い痛みやめまいを伴ったりする場合は注意が必要です。
この記事では、頭痛と耳鳴りが同時に起こる原因について詳しく解説します。
自宅でできる対処法や受診目安、病院での治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
頭痛と耳鳴りが同時に起こる原因

頭痛と耳鳴りが同時に起こる原因として、以下の5つが挙げられます。
- 片頭痛
- 更年期障害
- メニエール病
- ラムゼイハント症候群
- 聴神経鞘腫
ここでは上記5つの原因についてそれぞれ解説します。
片頭痛
片頭痛は、血管の拡張や収縮が神経を刺激することで起こる頭痛です。
耳鳴りと片頭痛は関連性が強く、耳鳴りのある人の約4割が片頭痛を経験しているという報告もあります。
片頭痛は頭の片側がズキズキと痛む拍動性の痛みが特徴で、吐き気や光・音への過敏、めまい、耳鳴りが同時に出ることも少なくありません。
近年では『カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)』という物質の関与もわかってきており、神経や血管の異常な反応が耳鳴りを強めることがあるとされています。
更年期障害
更年期障害では、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少することで自律神経が乱れ、頭痛と耳鳴りが同時に起こることがあります。
特に45〜55歳の女性に多く見られ、めまいやほてり、倦怠感なども一緒に出ることがある点が特徴です。
更年期の耳鳴りは数時間以内に軽快することがほとんどで、閉経後には自然に落ち着くことが多いです。
メニエール病
メニエール病は内耳のリンパ液が過剰にたまることで起こる病気で、耳鳴りや頭痛、めまい、耳の閉塞感などの症状を繰り返すのが特徴です。
発作は20分から数時間続くことがあり、回転性のめまいに加えて、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
早期段階では発作と発作の間に症状が軽減し、症状が現れない期間が1年以上続くことも少なくありません。
症状が進行すると耳鳴りが持続的になり、聴力が低下する場合もあります。
ラムゼイハント症候群
ラムゼイハント症候群は、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染し、帯状疱疹が耳に現れる病気です。
耳に水ぶくれや発赤が見られ、同時に頭痛や耳鳴り、顔面神経麻痺などが起こります。
治療はステロイド薬と抗ウイルス薬の併用が基本で、発症からできるだけ早く治療を始めることが重要です。
自然に治ることは少なく、治療が遅れると後遺症が残る可能性があります。
発疹や耳の痛み、顔の違和感などが生じたら、すぐに耳鼻科や神経内科を受診しましょう。
聴神経鞘腫
聴神経鞘腫は聴神経のうち『前庭神経』と呼ばれる部分にできる腫瘍です。
この腫瘍が大きくなると周囲の神経を圧迫し、耳鳴りや難聴、頭痛、めまい、ふらつきなどの症状を引き起こします。
最近では、脳ドックやMRI検査で小さいうちに発見されるケースも増えています。
腫瘍が小さい場合は経過観察で様子を見ることが多いですが、聴力の低下や腫瘍の拡大がある場合は、手術や放射線治療を検討する場合が多いです。
耳鳴りや聴力低下が続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
頭痛と耳鳴りが同時に起きたときの対処法

頭痛と耳鳴りが同時に起きたときには、以下のような対処法を試してみましょう。
- 音や光による刺激を遮断する
- 安静にして過ごす
- 頭痛の原因となる飲食物を控える
- 頭を冷やす
- 十分な睡眠時間を確保する
- 適度に運動する
- ストレスを発散する
ここでは上記の対処法についてそれぞれ解説します。
音や光による刺激を遮断する
頭痛や耳鳴りの症状があるときは、音や光による刺激をできるだけ遮断しましょう。
特に片頭痛が関係している場合、強い光や大きな音が症状を悪化させる原因になるため、静かで暗い部屋に移動して周囲の刺激を減らすことが大切です。
すぐに環境を変えられない場合は、アイマスクや耳栓を使うのも効果的です。
また、スマートフォンやパソコンなどの画面を見るのも刺激になるため、使用を控えるようにしましょう。
安静にして過ごす
頭痛や耳鳴りが出ているときは、体を動かすと血流が変化し、痛みが強くなることがあります。
そのため症状が出ている間は無理に動かず、静かに休むことが大切です。
特に片頭痛の場合、階段の上り下りや家事などの軽い動きでも痛みが悪化することがあります。
体を横にして、楽な姿勢で目を閉じて休むと回復が早くなるでしょう。
周囲の音や光を遮断しながらリラックスした状態で休むことで、頭や耳の神経の緊張が和らぎ、症状が落ち着きやすくなります。
頭痛の原因となる飲食物を控える
頭痛や耳鳴りが起きているときは、飲食物にも気を配ることが大切です。
飲食物の中には血管の拡張や収縮を促す成分が含まれ、発作を誘発するものがあるのです。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
- アルコール
- チーズ
- チョコレート
- ウインナーやハムなどの加工肉
- 乳製品やヨーグルト
- 揚げ物
こうした食べ物を完全に避ける必要はありませんが、症状が出やすい場合は控えめにすることが大切です。
バランスの良い食事を心がけ、水分をこまめにとるようにしましょう。
頭を冷やす
頭痛や耳鳴りを和らげるためには、頭を冷やすのが有効です。
特に片頭痛のように血管が拡張して起こるタイプの頭痛では、冷やすことで血管の広がりを抑え、痛みを軽くできます。
保冷剤をタオルに包み、痛みのある部分やこめかみに軽く当てましょう。
保冷剤を直接肌に当てると凍傷になる恐れがあるため、必ずタオルに包んで使用することが大切です。
ただし緊張型頭痛のように肩や首のこりが原因の場合は温めたほうが良いため、冷やして悪化するようなら医師に相談してください。
十分な睡眠時間を確保する
頭痛や耳鳴りが続くときは、まず睡眠の質と量を見直すことが大切です。
睡眠不足は片頭痛を引き起こす原因の一つで、患者さんの約3割が睡眠不足を感じているという報告もあります。
逆に、寝すぎも頭痛を悪化させることがあるため、適度な睡眠時間を守ることが重要です。
厚生労働省では、健康を維持するための目安として1日6時間以上の睡眠を推奨しています。
寝る時間を一定にして生活リズムを整えると、自律神経が安定しやすくなります。
寝具や寝室の環境を見直し、睡眠の質の向上・睡眠時間の確保を意識しましょう。
適度に運動する
頭痛や耳鳴りの症状が落ち着いているときは、軽い運動を取り入れるのがおすすめです。
運動をすることで血流が良くなり、脳や耳に十分な酸素と栄養が届きやすくなります。
また、運動はストレスの軽減にもつながり、自律神経のバランスが整いやすくなります。
激しい運動をする必要はなく、ウォーキングやストレッチ、ヨガ、深呼吸など、無理なく続けられるものが理想です。
症状が強いときは無理をせず、まずは体を休めることを優先しましょう。
ストレスを発散する
ストレスは頭痛と耳鳴りの大きな引き金になります。
精神的な負担が続くと体が緊張状態になり、血流が悪化して神経が刺激されやすくなるためです。
実際、片頭痛の患者さんの約6割が「ストレスが原因で発症した」と感じているという報告もあります。
ストレスをため込まないためには、日常的にリフレッシュする時間を持つことが大切です。
趣味に没頭したり、自然の中を散歩したり、好きな音楽を聴いたりと、自分に合った方法でストレスを発散しましょう。
仕事や人間関係など、ストレスの原因を完全に取り除くのは難しいですが、発散する習慣をつけることで症状の悪化を防ぎやすくなります。
頭痛と耳鳴りがするときの受診目安

頭痛と耳鳴りが同時に起こる場合は、放置せず早めに病院を受診することが大切です。
一時的なストレスや睡眠不足による軽い症状もありますが、脳や耳の神経、血管に関わる病気が隠れていることもあります。
特にめまいや吐き気、しびれなどを伴う場合は、重大な疾患の可能性もあるため注意が必要です。
すぐに病院を受診すべき症状としては、以下が挙げられます。
- 強い吐き気や嘔吐
- 突然後頭部を殴られたような衝撃的な痛み
- 手足のしびれ
- 視野の異常
- 物が二重に見える
上記に当てはまるものでなくても、症状の頻度が多い場合や日常生活に支障をきたしている場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。
頭痛の治療方法

頭痛の主な治療方法は以下の2つです。
- 薬物療法
- 生活習慣の改善
ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
薬物療法には『急性期治療』と『予防治療』の2種類があります。
急性期治療は頭痛が起きたときに痛みを和らげる方法で、鎮痛薬や片頭痛に特化したトリプタン系薬剤が使われます。
吐き気がある場合は、制吐薬を一緒に使用することが多いです。
発作が月に2回以上起こる人や症状が強い人には予防治療が行われます。
これは発作の回数や痛みの程度を減らすための治療で、抗てんかん薬やβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗うつ薬などが処方されるケースが多いです。
ただし鎮痛薬を長期間にわたって頻繁に使用すると、薬の使いすぎによる『薬物乱用頭痛』を起こすことがあるため、医師の指導のもとで正しく服用することが大切です。
生活習慣の改善
薬による治療と同じくらい重要なのが、生活習慣の改善です。
頭痛は睡眠不足やストレス、食生活の乱れ、長時間のスマホ・パソコン使用などが引き金となることがあります。
そのため十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけることが大切です。
食事面ではアルコールやチョコレート、チーズ、加工肉など、血管に影響を与える食品を摂りすぎないようにしましょう。
生活習慣を整えることで、薬に頼らなくても症状が軽くなるケースもあります。
耳鳴りの治療方法

耳鳴りの主な治療方法は以下の4つです。
- 薬物療法
- 音響療法・TRT療法
- 神経刺激療法
- 心理療法・カウンセリング
ここでは上記4つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
薬物療法では、耳鳴りの原因を抑えたり、症状を和らげたりするための薬を使います。
耳鳴りの治療で使われる主な薬は以下の通りです。
- ステロイド製剤
- 血管拡張剤
- ビタミン剤
- 内耳の循環改善剤
- 抗不安剤
- 抗うつ薬
- 抗けいれん薬
中耳炎や突発性難聴などの疾患が原因となっている場合は、その治療を優先することで耳鳴りの改善が見込めます。
医師の指導に従い、自己判断で薬を中止せずに治療を続けることが大切です。
音響療法・TRT療法
音響療法は、外部から音を聞かせることで耳鳴りを軽減させる治療法です。
例えば波の音や川のせせらぎの音などを流して、耳鳴りの音を目立たなくする『マスキング療法』があります。
一時的に耳鳴りから注意をそらすことで、精神的な負担を減らせます。
TRT療法は耳鳴りを完全に消すのではなく、「気にならないように慣れていく」ことを目指す治療法です。
専用の装置で小さな音を1日6〜8時間ほど聞き続け、脳に「耳鳴り音は危険ではない」と学習させます。
カウンセリングも同時に行い、耳鳴りに対する不安を減らすことで、半年〜2年程度で改善が期待できます。
神経刺激療法
神経刺激療法は、脳や神経の働きを直接調整して耳鳴りを和らげる治療法です。
代表的なのが『経頭蓋磁気刺激法(TMS)』と呼ばれる方法で、磁気によって大脳の聴覚をつかさどる部分に微弱な刺激を与え、異常な神経の興奮を抑えます。
短期間で耳鳴りの音が軽減するケースも報告されていますが、長期的な効果についてはまだ研究段階です。
今後のさらなる臨床試験によって、長期的な有効性の解明が期待されます。
心理療法・カウンセリング
耳鳴りは、音そのものよりも「気になってしまうこと」がつらさを強める要因になるため、心理的なケアも非常に重要です。
心理療法ではカウンセリングや認知行動療法、マインドフルネス瞑想などを通して、耳鳴りに対する不安やストレスを軽減していきます。
専門のカウンセラーや医師が耳鳴りの仕組みを説明し、患者さんが正しく理解することで「この音は危険ではない」と感じられるようになります。
まとめ
頭痛と耳鳴りが同時に起こる場合、ストレスや生活習慣の乱れ、血流の悪化などが原因となっているケースが多いですが、脳や内耳の病気が隠れているケースもあります。
静かな環境で休む、十分な睡眠をとる、刺激物を避けるなど、日常生活の工夫で症状が和らぐこともあります。
それでも改善しない、あるいはめまい・吐き気・手足のしびれなどを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、頭痛外来専門医による外来診療を行っています。
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