ボトックス治療について

ボトックスとは

ボトックスとは、A型ボツリヌス毒素を有効成分とする骨格筋弛緩剤です。末梢の神経筋接合部における神経筋伝達を阻害することにより筋弛緩作用を示します。

適応疾患としては、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、および斜視における筋の攣縮および緊張であります。自費ではなく、保険制度内での治療となります。

当院での治療可能となる疾患、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)、片側顔面痙攣、上肢痙縮(じょうしけいしゅく)、下肢痙縮(かしけいしゅく)、痙性斜頸(けいせいしゃけい)についてご説明致します。


眼瞼痙攣(がんけんけいれん)

眼瞼痙攣とは、40-60歳代の中高齢者で多く、比較的女性に多く認めます。間代性・強直性の筋収縮が両側の眼輪筋に不随意に反復出現する病態であります。羞明感(微かな光でも眩しいと感じやすい)あるいは、眼部の刺激感、違和感から始まり、重症化すると閉瞼障害(眼を閉じられない)を来たし機能的に失明する状態に至ります。通常は両側の対称性でありますが、軽度の左右差を認めることもあります。

片側顔面痙攣

顔面神経の不随意な興奮によって支配筋に攣縮が生じる病態です。通常は、REZ(Root exit zoon)と言われる脳幹部から顔面神経への移行する部位に血管が接触、または食い込むことが原因となります。稀に、腫瘍や嚢胞病変、動脈瘤等により、この部位が圧迫されていることが原因となることもあります。基本的には片側にだけ生じる病態であります。

上肢痙縮(じょうしれんしゅく)・下肢痙縮(かしれんしゅく)

脳卒中や、脳性麻痺、頭部外傷、脊髄損傷、多発性硬化症等の疾患を患った後に、脊髄での反射が亢進し、筋緊張の亢進による運動障害や不随意運動を特徴とします。軽度であれば、起立歩行や姿勢保持に役に立っていますが、重度になると日常生活の動作を悪化させます。痛みを伴ったり、締め付け感が強くなり、生活の質は著しく低下します。

ボツリヌス療法(ボトックス注射)は、脳卒中治療ガイドライン2015においてもグレードAで推奨されております(グレードAとは、行うように強く勧められる基準であることです)。上肢下肢の痙縮の軽減、関節可動域の増加、日常生活上の介助量の軽減に有効であります。また、定期的な反復治療を行うことにより、長期的な痙縮の改善効果が期待できます。 上肢の痙縮に関しては、ボツリヌス毒素を上腕、前腕や手指筋群に注射します。下肢に関しては、大腿、下腿や下肢筋群に注射します。

痙性斜頸(けいせいしゃけい)

頭頸部の筋緊張異常により頭位に異常を生じる疾患です。症状は患者さんによって異なり、頭部の回旋・側屈・前後屈や、肩挙上、側彎、躰幹のねじれなど様々な組み合わせで出現し、振戦などの不随意運動を伴う場合もあります。筋緊張の異常が、胸鎖乳突筋、僧帽筋、後頸部筋(頭板状筋)、肩甲挙筋、斜角筋などに見られ、頭位の異常を認めます。

対象疾患について

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)・片側顔面痙攣

初診の方は、受診日をご予約ください。まず初回外来受診日に佐々木が診察し、症状を判断し診断いたします。片側顔面痙攣の場合は、MRI検査(1.5テスラの高精度のMRI)を行い、頭蓋内に原因がないかを確認いたします。眼瞼痙攣が疑われる際にも、稀に頭蓋内に原因があることもあるのでMRI検査を受けて頂くこともあります。診断後は、次回来院日を予約して頂きます。顔面が痙攣する疾患は、他にも眼部ミオキミア、チック、開瞼失行等ありますので、顔面が痙攣する症状を全てボトックスで治療できるわけではありません。

ボトックス投与方法としては、痙攣が生じている顔面の筋肉に対して、一カ所1-2単位の量(0.1-0.3cc)の製剤を非常に細い針で筋肉内に注射していきます(投与部位に関しては下図参照)。注射する部位はアルコール綿で消毒を行いますが、アルコールによる過敏症等をお持ちの方は診察時に医師に伝えてください。

初回の方は、合計で10単位まで投与になります。

初回投与後、効果が不十分な場合は、合計20単位を上限とし追加投与していきます。

再投与に関しては、2ヶ月以上の期間をあけて、合計30m単位を上限として投与していきます。効果継続期間は、投与する単位量により変わりますが、約2-3ヶ月です。毎回診察時に、注射の効果の具合を確認し、適宜担当医が投与量を調整していきます。

他院にて既にボトックス注射を行なっている方に関しては、外来予約される際は、初回外来診察時に、ボトックス注射製剤をご用意する必要があるので、その旨を伝えてください。前医での診療情報提供書をお持ちであれば、初回診察時に持参をお願いしておりますが、前医からの診療情報提供書の受け取りが困難な場合でも、診察上特に問題ありませんので、直接外来診察にお越しください。

上肢痙縮(じょうしけいしゅく)・下肢痙縮(かしけいしゅく)

上肢痙縮に関しては、複数の緊張筋に対して合計240単位までの量を分割して投与いたします。下肢痙縮に関しては、合計300単位までの量を分割して投与いたします。効果持続時間に関しては、3ヶ月程度であります。

他院にて既にボトックス注射を行なっている方に関しては、外来予約される際は、初回外来診察時に、ボトックス注射製剤をご用意する必要があるので、その旨を伝えてください。

痙性斜頸(けいせいしゃけい)

初回投与時は、30-60単位を分割しそれぞれの緊張筋に投与します。初回投与後、4週間経過し、効果が不十分な場合は、180単位まで追加投与を行います。それ以降に関しては、症状が再発した場合は、2ヶ月以上の期間をあけて上限240単位として治療を行なっていきます。

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