海綿状血管腫
海綿状血管腫は、頭蓋内の大脳、小脳、脳幹のどこにでも発生する血管異常の塊です。脳幹に発生した場合は、近接した神経線維の障害をきたしますが、大脳に発生した場合は、出血し、てんかん症状(手や足が自分の意思に関係なく動いたり、急に全身の筋肉が硬直し、意識を失う症状)を認めたり、頭痛を自覚したり、麻痺症状を引き起こしたりします。最近では、脳ドックが発達し、未出血で、無症状の海綿状血管腫が発見されることが多くなりました。無症状で、出血せず偶然発見された海綿状血管腫が、治療の適応になることはほとんどないですが、部位によっては、てんかんを引き起こす可能性を考慮し摘出する場合もあります。血管腫が一度出血し、神経障害が出現しても、しばらく様子をみると障害された神経症状が完全に回復することもよくあります。その状況(神経症状の増悪と完全回復)を繰り返す場合は、手術を行う必要性は低いと考えます。しかし、神経症状が徐々に悪化し、さらに出血も繰り返す状態が継続すると、手術を推奨します。ただ、この判断に関しては、術者の経験と技術により判断されるものであり、担当医によって判断は様々です。一つの画像でも、それを見た脳神経外科医によって、判断が変わることがあるので、この疾患に関しては、何人かの脳神経外科医の意見を聞くことをお勧めします。一番大切なことは、できるだけ正常な脳組織を傷つけないアプローチを選択することです。また、大きな血管腫を摘出する場合であっても、5㎜程度の穴から腫瘍を摘出するように心がけております。究極の鍵穴手術と考えております。
症例 20代 男性
頭部外傷のため頭部を精査した際に、右側頭葉に出血を認めました。MRI検査施行し、海綿状血管腫からの出血と診断されました。今後のてんかん予防のため、手術を希望されました。
CTとMRI検査です。
CT検査にて赤矢印で示しているのが、出血です。
MRI検査を行うことで、脳出血か海綿状血管腫からの出血か、どちらかを判断することができます。黄色矢印の部位に海綿状血管腫を確認できます。
実際の術中画像です。
脳表面に少し黄色になった部位(黄色丸)が確認できます。海綿状血管腫からの出血の鉄分の色素が沈着し、脳表の色が変化しています。血管腫の位置を確認する指標となります。
実際の術中画像です。 脳組織に埋没している血管腫を確認できます(黄色丸)
実際の術中画像です。
実際の術中画像です。
すべての血管腫を摘出した直後の画像です。正常脳が確認でき紫色の血管腫は確認できません。
実際の術中画像です。
硬膜切開は、ほぼ人差し指の先端の大きさ程度ということがわかります(黄色丸)。鍵穴手術で手術しております。また皮膚切開も剃毛せず行っております(赤丸)。
術後MRI検査です。
血管腫は全摘出されております。