「後頭部がズキズキ痛む」
「頭の後ろの方が痛い」
頭痛はほとんどの方が経験したことのある症状ですが、このような後頭部の頭痛の原因の中には、脳動脈解離やくも膜下出血など、命にかかわる病気が隠れているケースもあります。
この記事では、後頭部に起こる頭痛の主な原因と痛み方、後頭部がズキズキ痛むときの対処法、病院を受診する目安などについて詳しく解説します。
後頭部の頭痛でお悩みの方、頭痛はあるものの病院を受診すべきか悩んでいる方はぜひ記事を最後までチェックしてみてください。
後頭部頭痛の主な原因と痛み方
後頭部に起こる頭痛の原因は、肩や首こりなどの緊張に伴う「緊張型頭痛」から、生死にかかわる「脳動脈解離」「くも膜下出血」まで多岐にわたります。
後頭部頭痛の主な原因は、以下の通りです。
- 緊張型頭痛
- 後頭神経痛
- 脳動脈解離(椎骨動脈解離)
- くも膜下出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎・脳炎
- 頚椎疾患
- 一次性運動時頭痛(労作性頭痛)
- 帯状疱疹
ここからは、それぞれの特徴や痛み方について詳しく解説します。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭痛の中でも多く見られるタイプで「ぎゅーっと締め付けられるような痛み」「じわじわした鈍い痛み」が特徴の頭痛です。
我慢できないほどではなく、日常生活に支障をきたすほど重度になることはまれです。
緊張型頭痛の原因ははっきりわかっていないものの、身体的・精神的なストレスが複雑に関係して起こると考えられています。
長時間のパソコン・スマートフォン操作や同じ姿勢を続けると筋肉の血流が悪くなり、そこに乳酸などの疲労物質が蓄積して神経が刺激されることで、痛みにつながります。
また、精神的なストレスや睡眠障害、頚椎の変形なども影響しています。
後頭神経痛
後頭神経痛とは、頭頂部〜後頭部にかけて起こる神経痛の一種です。痛む場所によって「大後頭神経痛」「小後頭神経痛」「大耳介神経痛」の3種類に分けられます。
痛み方としては「チクチク、ズキズキ、キリキリする痛み」「一瞬電気が走るようなビリッとした痛み」「しびれ感や違和感」が特徴です。頭頂部〜後頭部のほか、耳の後ろや耳の中が痛むこともあります。
悪い姿勢による筋肉の緊張や神経の圧迫、精神的ストレスなどが原因です。
後頭神経痛は1週間ほどで自然に治ることが多いといわれているものの、他の疾患が潜んでいる場合もあるため、我慢せず医療機関で詳しい検査を受けましょう。
脳動脈解離(椎骨動脈解離)
後頭部の痛みで怖いのが、脳動脈解離(椎骨動脈解離)です。
脳動脈の壁は、内側から内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。一番内側にある内膜が傷つき、そこから血液が入り込んで、血管が裂けてしまうことを脳動脈解離といいます。
動脈解離は全身の動脈のどこでも起こる可能性がありますが、中でも日本人などアジア人に多いのが首の後ろの方の血管が解離する「椎骨動脈解離」です。
多くの場合で片側だけに起こり、首筋や後頭部、首の付け根の痛みとして現れます。
椎骨動脈解離は突然ズキズキとした強い頭痛を感じることもあれば、肩こりや寝違え程度の軽度の痛みの場合もあり、見逃されやすい疾患です。
椎骨動脈解離はくも膜下出血や脳梗塞につながることもあるため、後頭部や首の痛みがある方は早めに脳神経外科を受診しMRI検査を受けましょう。
くも膜下出血
くも膜下出血は、「今までに経験したことのない激痛」「バットで頭を殴られたような痛み」とも例えられる非常に激しい頭痛が特徴です。
頭痛のほか、吐き気や嘔吐、めまい、視力低下、けいれんなどが見られ、意識を失うこともあります。
すぐに処置しないと命を落とす危険があるため、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
脳腫瘍
脳腫瘍による頭痛は、「数ヶ月〜数週間かけて徐々に痛み強くなる」「朝方に痛みが強くなる」「寝起きが最も痛みが強く、徐々に軽くなる」ことが特徴です。
腫瘍ができる場所によっては、目の見えにくさ、手足のしびれや麻痺、けいれんなどが起こることがあります。
「軽い頭痛があり脳ドックを受けたら偶然、脳腫瘍が見つかった」というケースも少なくありません。
髄膜炎・脳炎
髄膜炎や脳炎でも、後頭部頭痛が起こることがあります。
髄膜炎は髄膜(脳や脊髄を覆う膜)に、脳炎は脳自体に細菌やウイルス感染による炎症が起こる病気です。
初期症状は頭痛や発熱など風邪に似ていますが、重症化すると意識障害、けいれんなどが起こり命にかかわり、直ちに医療機関の受診が必要な病気です。
頚椎疾患
頚椎疾患によって後頭部に頭痛が生じている可能性もあります。
頚椎同士をつなぎ、クッションの役割をしている椎間板が加齢によって変性したり、悪い姿勢によって負担がかかり続けると神経が圧迫され、さまざまな症状が起こります。
頭痛もその一つで、ほかにも首や肩のこりや痛み、背中の痛み、しびれ、運動障害などが見られます。
一次性運動時頭痛(労作性頭痛)
一次性運動時頭痛(労作性頭痛)とは、運動中や運動後に起こる頭痛のことで、「ズキンズキンと脈打つような痛み」が特徴です。
筋トレ時に発症することが多く、似た症状として咳やいきみで起こる「咳嗽性頭痛」、性行為の際に起こる「性交時頭痛」などがあります。
椎骨動脈解離やくも膜下出血など重大な病気で起こる頭痛と見分けがつきにくいため、早めに脳神経外科でMRI検査を受けるようにしましょう。
帯状疱疹
帯状疱疹でも、後頭部に頭痛が起こることがあります。
帯状疱疹は水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こる病気で、「神経に沿って体の片側だけにピリピリ・ズキズキする痛みや、水ぶくれや赤い斑点が帯状に生じる」ことが特徴です。
全身どこにでもできることがあり、頭部では後頭部、前頭部、顔面、耳介が好発部位です。
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛の2タイプ
頭痛は日本人の4人に1人が悩むといわれるほど身近な症状ですが、単に頭痛といっても、さまざまなタイプがあります。
大きく分けると「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2タイプです。
ここでは、それぞれの頭痛について詳しく解説します。
頭痛そのものが病気の「一次性頭痛」
一次性頭痛とは、原因となる病気が特定できない頭痛のことで、「頭痛そのものが病気の頭痛」といわれます。
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が代表的な一次性頭痛です。
繰り返し起こることが特徴で、命にかかわる頭痛ではないものの、ひどい場合は仕事や日常生活に支障をきたしてしまうことも少なくありません。
命にかかわることもある危険な「二次性頭痛」
頭痛の中でも注意しなければならないのが、二次性頭痛です。
二次性頭痛はなんらかの病気が原因となって引き起こされる頭痛で、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などの病気が隠れている可能性があり、放置すれば命にかかわります。
普段とは異なる頭痛や、身動きできないほどの激しい頭痛が起こった場合は、迷わずすぐに病院を受診しましょう。
どうしても判断に迷う場合は「#7199」の救急相談に電話すれば、医師や看護師、救急救命士に24時間・年中無休で相談できます。
後頭部の頭痛で病院を受診する目安
後頭部の頭痛が気になっているものの、病院を受診した方がいいか迷ってしまっている方もいるかもしれません。
ここでは、後頭部の頭痛で病院を受診する目安を紹介します。
すぐに病院を受診すべき症状
以下のような症状がある場合、躊躇せず、すぐに病院を受診しましょう。
- 我慢できないほどの激しい痛みがある
- 吐き気、力が入らない、目が見えにくい、うまく話せない、意識がおかしいなど別の症状がある
- 事故や怪我の後に頭痛が生じている
- 痛みがどんどん強くなる
このような症状は命にかかわる病気が原因となっていることがあるため、時間を問わず直ちに治療を受ける必要があります。
かかりつけ医への相談が推奨される症状
以下のような症状がある場合は、できるだけ早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
- 頭痛によって仕事や日常生活に支障が出ている
- 頻繁に頭痛が起こる
- 市販の鎮痛剤を飲んでも効果がない
- 目の充血、皮膚の発疹などがある
- そのほかの病気の治療中で、頭痛が出ている
気になる頭痛はあるものの「頭痛があるのはいつものことだから」「まだ我慢できるから大丈夫」「受診するほどではない」と放置していると、症状が悪化してしまうかもしれません。
また、何か重大なサインとして頭痛が起こっている可能性もあります。後頭部の頭痛を自覚した場合は、気になるようであればすぐに医療機関を受診しましょう。
後頭部がズキズキ痛むときの対処法
ここでは、後頭部に痛みがあるときの対処法を紹介します。
長時間同じ姿勢を避ける
長い時間パソコンやスマホを見続けたり、車の運転をしたりして同じ姿勢を長時間続けると、筋肉の血流が悪くなり、頭痛を悪化させる原因になります。
特に猫背やストレートネックなどの悪い姿勢には注意しましょう。
正しい姿勢を心がけ、定期的に休憩をとることが大切です。
鎮痛剤を使用する
どうしてもすぐに病院を受診できない場合は、鎮痛剤を飲んで痛みに対処しましょう。
ただし、鎮痛剤は一時的に痛みを鎮めるのみで、根本的な治療にはなりません。
鎮痛剤を使い過ぎると「薬剤乱用頭痛」を引き起こし、余計に頭痛がひどくなってしまう可能性があります。また、重大な病気を見逃してしまうかもしれません。
鎮痛剤はあくまで一時的な対処と考え、なるべく早めに脳神経外科で詳しい検査を受けましょう。
ストレッチやマッサージで筋肉の緊張をほぐす
筋肉が緊張すると頭痛につながるため、ストレッチやマッサージで筋肉の緊張をほぐすのも効果的です。
後頭部や首、肩のマッサージやストレッチは、緊張型頭痛を予防する効果も期待できます。適度な運動や入浴もおすすめです。
医師に相談する
上記で紹介した内容はあくまで一時的な対処法であり、頭痛の根本的な解決にはなりません。
つらい頭痛を根本的に治療するには、医師に相談して頭痛の原因に合った治療を行う必要があります。また、重大な病気が隠れていないか、MRI検査などで詳しく調べることも重要です。
病院では、原因に合わせてさまざまな治療ができます。痛み止めのほかにも、片頭痛を予防する注射や、片頭痛発作を抑える薬などによる治療も可能です。
症状や悩みに合わせた治療ができるため、医師に相談してみましょう。
後頭部の頭痛に関するよくある質問
ここでは、後頭部の頭痛に関するよくある質問を紹介します。
Q:吐き気がある場合は危険?
ひどい片頭痛では吐き気が見られることがありますが、くも膜下出血や脳腫瘍でも起こることがあり、注意したい危険な症状の一つです。
大きな病気が隠れている可能性も考えられるため、早めに脳神経外科で詳しい検査を受けましょう。
Q:後頭部の頭痛と新型コロナウイルス感染症の関係は?
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけにテレワークが増加しましたが、これによって後頭神経痛の患者さんが増えているようです。
後頭神経痛は、悪い姿勢が最大の原因といわれているため、テレワーク中の姿勢には十分注意しましょう。
またこれとは別に、コロナ後遺症として頭痛を訴えるケースもありますが、具体的なメカニズムはわかっていません。
まとめ
後頭部に起こる頭痛の原因はさまざまです。
くも膜下出血や脳動脈解離(椎骨動脈解離)、脳腫瘍など命にかかわる重大な病気が隠れているケースもあるため、気になる後頭部頭痛がある場合は早めに脳神経外科で詳しい検査を受けましょう。
心配のないケースの頭痛であった場合も、つらい痛みが慢性的に続けば、仕事や日常生活に支障をきたしてしまいかねません。
神奈川県相模原市の脳神経外科 福島孝徳記念クリニックでは、早期発見・早期治療を第一に考え、脳ドックを行っています。
また、「日本頭痛学会認定 頭痛専門医」による頭痛外来も行っておりますので、つらい頭痛にお悩みの方はぜひ一度お気軽にご相談ください。